| 抄録 |
はじめに)摂食障害は,肥満恐怖を伴う食行動異常を主症状とした原因不明の慢性・難治性疾患である。5~15%の患者が経過中に自殺あるいは病死の危険があるとされ,一般に重篤な身体合併症を併発する例はBMI<13kg/m2といわれる。さらに約40%の患者が肝機能障害を有するとされている。 今回,重篤な肝障害を呈した神経性食欲不振症の症例に対し,内科,精神科医師,栄養士,臨床心理士,看護婦によるチーム医療の介入により,初期治療に成功した1例を経験した。症例)17歳 女性 現病歴)中学生のときは,体重48kgだった。 高校に入ってダイエットを開始したきっかけから少しずつ体重が減少した。その後,家庭や友人関係のトラブルがあり,摂食障害が出現し, 平成19年4月学校検診にて体重が35kgに減少したため近医を受診した。 肝機能障害を認め,同年7月当科を紹介された。半年前より生理は止まっている。 既往歴)特記事項なし 身体所見)身長 159cm,体重 30kg,BMI 11.8, 全身るいそうあり。産毛の増加あり。黄染なし。下肢浮腫なし。採血結果では,AST 196 IU/l, ALT 228 IU/l, PT 52.5 %,ALP 228 IU/l, G-GTP 53 IU/lと肝障害を認めた。ウィルス肝炎や自己免疫性肝炎等の急性肝炎を呈する疾患の所見やは認めなかった。また薬剤歴もなかった。Refeeding syndromeに注意して栄養療法を開始し,第2病日にALT 770 IU/l, PT 46.7%まで悪化したが,その後,体重の上昇とともに肝障害は速やかに改善していった。第7病日に肝障害の精査目的に肝生検を試行した。肝細胞に著名なグリコーゲンの貯留が認められる以外は,明らかな所見はなく,炎症細胞浸潤や繊維化,脂肪化の所見は見られなかった。文献的には,神経性食欲不振症に合併する肝障害に対して,病理学的な検討をした症例は少なく,本症例と同様にグリコーゲン蓄積を認める症例のほか,脂肪肝や,pericellularfibrosisを呈する症例や,その他,門脈域に非特異的な炎症細胞浸潤を認める症例など多彩であり,なおかつ肝障害の原因も一貫した結論がない。貴重な症例と考えられたので若干の文献的考察を加え報告する。 |