セッション情報 パネルディスカッション7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

肝疾患の病態に及ぼす血小板の意義

タイトル 消PD7-8:

肝細胞癌術後10年間無再発のための術前および術後血小板数維持の意義

演者 海堀 昌樹(関西医大・外科)
共同演者 久保 正二(大阪市立大大学院・肝胆膵外科学), 永野 浩昭(大阪大大学院・消化器外科学)
抄録 【目的】肝癌術後再発は高頻度であり長期の無再発期間を得ることは困難であるが、まれに10年無再発例を経験する。肝癌術後10年無再発経過後に再発する症例も存在しているが、これら再発例に関する検討はほぼなされていない。今回我々は、5大学共同研究による長期無再発経過後の肝癌再発例の臨床的特徴および術前血小板数の意義を検討。【方法】2000年までの肝癌根治切除940例対象。肝癌術後10年無再発経過症例は74例(8%)であり、10年以降肝癌再発を生じた症例は14例(19%)に認めた。無再発群60例と再発群14例における術後成績に関して比較検討。【結果】全症例術後観察期間中央値151ヶ月。術前肝機能においては術前血小板数が無再発群19.2±7.3×104/μl、再発群13.3±3.4×104/μlであり有意に無再発群が高値であった。腫瘍マーカーには差を認めず。手術時因子、病理組織学的因子においても両群間に差を認めず。再発14例治療はTACE7例、再肝切除4例、経皮的局所療法2例、BSCが1例であり、5例死亡(4例肝癌死)。再肝切除4例は初回再発以降無再発生存。無再発群60例中2例が他病死であった。累積生存率は無再発群、再発群において術後15年・20年生存率はそれぞれ91%/68%・91%/34%(p=0.0198)。患者背景を含めた術前および手術時・病理学的因子28項目での再発に対する独立予後因子は術前血小板数15万以下であった。また術後10年目での腫瘍マーカーを含めた血液生化学因子での再発に対する独立予後因子は術後10年時血小板数15万以下であった。【結語】肝癌術後10年間無再発経過症例において約19%が肝癌再発を生じており、生涯にわたる経過観察を要する。10年以降肝癌再発に対する予後規定因子は術前および術後10年時の血小板数であった。これまで肝癌再発予後因子としての血小板数に関する報告は少ないが、血小板自体の抗線維化作用を含めた肝機能との相関が考慮される。今回の検討より肝癌肝切除術にける血小板数の意義が再考されるものと考えられた。
索引用語 肝癌術後長期無再発, 血小板数