セッション情報 パネルディスカッション7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

肝疾患の病態に及ぼす血小板の意義

タイトル 消PD7-10:

肝硬変例におけるPSE・Splenectomyの血小板増加および肝機能改善効果に関する検討

演者 林 洋光(熊本大大学院・消化器外科学)
共同演者 別府 透(熊本大大学院・消化器外科学), 馬場 秀夫(熊本大大学院・消化器外科学)
抄録 【はじめに】肝硬変に伴う脾機能亢進症に対して部分的脾塞栓術(PSE)や脾臓摘除術(Spx)が行われ、主効果の血小板数増加だけでなく副次的な肝機能改善効果も示唆されている。今回PSE, Spxの血小板増加および肝機能改善効果に関する臨床的有用性と合併症等の差異について検討した。【方法】PSEを行った83例(1999年~2009年)と、Spx(2008年~11年)を行った33例が対象。PSE後に肝組織(非癌部)が得られた2症例でPCNAの免疫組織染色を行った。【結果】PSE群の平均脾梗塞体積と梗塞率はそれぞれ428±244mLと76±12%。Spx群の平均脾体積は660±438mL。PSEにより血小板数(×104/μl)は術前4.7±1.5から1か月後に12.6±6.4、1年後に10.5±3.4へ増加。一方、Spx群では術前5.2±1.7から1か月後に21.0±11.5、1年後に14.1±5.8へ増加。肝機能について術後1年後のAlb値(g/dL)とChE値(IU/L)は両群において改善した(PSE群ではAlbが3.4±0.5→3.6±0.5、ChEが75.5±27.9→96.5±44.1、Spx群ではAlbが3.6±0.4→3.7±0.5、ChEが159±64→185±80)。PSE後肝組織ではPCNA発現の増加を認めた。PSEにおける脾梗塞体積およびSpxにおける脾体積は血小板増加数と有意な正の相関関係を認めた。一方で血小板増加数と肝機能改善効果に関して有意な相関関係はなかった。合併症に関してPSE後に14.5%、Spx後に24.2%認めた。【考察】PSE, Spx後には血小板増加効果だけでなく肝機能改善効果も認めた。PSE後の肝機能改善効果にはPCNA発現増加に示される肝細胞増殖効果が関与する可能性が示唆された。ただし、両治療法後の肝機能改善効果と血小板増加効果に正の相関関係はなく、肝機能改善効果に関しては血小板増加効果以外の要素も関与することが示唆された。血小板増加効果はPSEに比べてSpxが有効であるが、合併症率はSpxでやや高い傾向にあり、治療法の選択には必要な血小板増加数や全身状態を加味した総合的な判断が必要と考えられる。
索引用語 脾機能亢進症, 肝機能