セッション情報 パネルディスカッション7(肝臓学会・消化器病学会・消化器がん検診学会合同)

肝疾患の病態に及ぼす血小板の意義

タイトル 肝PD7-12:

肝移植後C型肝炎治療における脾摘の意義

演者 金 秀基(京都大・消化器内科)
共同演者 上田 佳秀(京都大・消化器内科), 上本 伸二(京都大・肝胆膵・移植外科)
抄録 【目的】HCV陽性レシピエントに対する肝移植では、移植前に一度肝硬変を経ているために、ほとんどの症例で脾腫を伴っており、移植後も血小板減少が持続する。これは移植後C型肝炎に対するインターフェロン(IFN)治療時の問題点の1つであり、その対策として血小板数増加を期待して移植時に脾摘を行うケースも増えている。今回、当院での肝移植後C型肝炎治療における脾摘の意義について検討した。
【方法】2002年1月から2010年12月までに当院にて抗ウイルス治療を行った肝移植後C型肝炎症例103例について、肝移植時に脾摘を施行した脾摘(+)群53例、脾摘を施行しなかった脾摘(-)群50例の2群に分け、移植前後の血小板数、肝線維化、IFN治療成績について比較検討を行った。
【成績】肝移植前の血小板数(中央値)は、脾摘(+)群4.3(2.3-10.4)万/μl、脾摘(-)群4.95(1.9-10.8)万/μlで有意差を認めなかった。しかし、移植後(IFN治療開始前)の血小板数(中央値)は、脾摘(+)群26.7(9.2-46.7)万/μl、脾摘(-)群10.8(4.3-40)万/μlと脾摘(+)群が有意に高かった。移植前後の血小板増加数(中央値)についても、脾摘(-)群は5.0(0.9-34.6)万/μlとほとんど増加していないにも関わらず、脾摘(+)群は21.6(6-43.2)万/μlと著明な増加を認めた。また、IFN治療前の肝生検組織を用いた評価(F0/F1/F2/F3)では脾摘(-)群(22%/48%/28%/2%)が脾摘(+)群(11%/79%/3%/7%)よりも線維化が進行している傾向にあった。最終的に治療後SVR率は、脾摘(+)群(49%)が脾摘(-)群(40%)よりも高い傾向にあった。
【結論】HCV陽性レシピエントの硬変肝が、肝移植によりトロンボポエチンの産生能が正常なドナー肝に置き代わっても、血小板数の増加は軽度であった。一方、脾摘を併用することにより十分な血小板数増加が得られたことから、肝硬変における血小板減少の主たる原因は脾機能亢進であると考えられた。また、肝移植に加えて脾摘を行うことにより、肝移植後C型肝炎に対するインターフェロン治療成績の向上に繋がる可能性が示唆された。
索引用語 血小板, 脾摘