セッション情報 シンポジウム1(肝臓学会・消化器病学会合同)

分子標的治療の限界を超える新しい肝癌治療法の開発

タイトル 肝S1-11:

進行肝細胞癌に対するソラフェニブ治療の問題点を克服する鉄キレート剤治療

演者 山崎 隆弘(山口大・消化器病態内科学)
共同演者 浦田 洋平(山口大・消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大・消化器病態内科学)
抄録 【目的】ソラフェニブは、進行肝細胞癌(進行肝癌)における推奨治療として認知されているが、さまざまな問題点も指摘されている。今回、ソラフェニブ治療の問題点ならびに我々の開発した新規の鉄キレート剤(DFO)治療(iron-metal manipulating therapy; i-MM therapy)の成績からみた進行肝癌の治療戦略について検証する。【方法】1) 肝動注無効例からのソラフェニブ導入可能率:肝動注施行114例のうち、無効例65例のソラフェニブ導入可能率を検討した。2) ソラフェニブ治療の現状:32例(Child-Pugh score 5/6/7:12/18/2, Stage II/III/IVA/IVB:5/10/5/12)において肝予備能低下ならびに病勢制御について検討した。3) i-MM therapy:肝動注無効例の進行肝癌10例(Stage II/IVA/IVB=1/2/7; Child-Pugh A/B/C=3/5/2)に対してDFO10-80mg/kgを24時間持続動注、週3回隔日投与し、有用性を検討した。【結果】1) 16例(25%)しか、ソラフェニブ導入は見込めなかった。2) Child-Pugh Aの維持率は、1M/3M/6M/12M:75.9/51.5/32.2/32.2%であり、肝予備能低下に寄与する因子として、Child-Pugh score 6/7, PT<80%, 男性が抽出された。mRECISTの評価にて奏功率10.3%、病勢制御率51.7%(PR3, SD12, PD14: 治療効果評価可能29例)であり、病勢制御に寄与する因子としてStage IVA B, 投与1ヵ月後Child-Pugh Bへの移行が抽出された。3) 奏功率20%(PR2, SD3, PD5)、1年生存率20%であり、PR例では、著明な腫瘍マーカーの低下を認めた。【考察】ソラフェニブの問題点として、肝動注無効例からのソラフェニブ導入可能症例が少なく、1年で約70%がChild-Pugh Bへ移行し、奏功率が低いのが挙げられ、ソラフェニブ投与早期にChild-Pugh Bへ移行する症例はi-MM therapyを考慮すべきと考えられた。【結語】進行肝癌の治療戦略として、i-MM therapyは有効な新規治療となりえる可能性が示唆される。現在、Child-Pugh Aに対してはソラフェニブvsソラフェニブ+DFOとのRCTを実施中であり、Child-Pugh Bに対してもRCTを予定している。
索引用語 ソラフェニブ治療, 鉄キレート剤治療