セッション情報 一般演題

タイトル

シアノアクリレートによる肝動脈・門脈シャント塞栓術が有用であった一例

演者 平野 茉来(東芝病院 消化器内科)
共同演者 阿部 妹子(東芝病院 消化器内科), 新井 雅裕(東芝病院 消化器内科), 中尾 國明(東芝病院 消化器内科), 三輪 純(東芝病院 消化器内科), 松原 康朗(東芝病院 消化器内科), 冨田 高重(東芝病院 消化器内科), 田代 淳(東芝病院 消化器内科), 太田 裕彦(東芝病院 消化器内科)
抄録 肝動脈・門脈シャント(APシャント)は、肝硬変や肝細胞癌に伴ってしばしば形成され、門脈圧亢進から腹水貯留や食道静脈瘤破裂の原因となる。APシャント塞栓には金属コイルやスポンゼルが使用されることが多いが、効果不十分な場合も少なくない。今回、我々は医療用生体接着剤であるシアノアクリレート(アロンアルファA)を用いてAPシャント塞栓術を施行し、有用であった一例を経験したので報告する。症例は61歳男性。1981年頃C型慢性肝炎と診断。2001年9月肝細胞癌を初発し、同年10月当院内科紹介受診。RFAにて治療を行ったが、その後再発。以後、再発肝癌に対しRFA、TAEなどを繰り返し施行している。2007年6月門脈左枝臍部に腫瘍栓が出現。リザーバーの埋め込みを行い、low dose FPによる動注化学療法を施行した。治療によって門脈腫瘍栓は退縮したが、著明な腹水貯留が出現。また、食道静脈瘤破裂による吐血を数回繰り返した。EVLによる止血を行ったが、F3、RC(3+)の食道静脈瘤が多数存在していた。ドップラー超音波にて門脈血流を評価したところ、左門脈血流は遠肝性の動脈波を呈し、右門脈血流は弱い求肝性定常波を示した。門脈本幹の血流は、左門脈からの遠肝性血流であり、肝左葉に形成されたAPシャントを原因として門脈圧が亢進し、腹水貯留ならびに静脈瘤破裂の原因となっていると推定された。そこで、血管造影を施行し、シアノアクリレートとリピオドール混合液(1:2)を用いてAPシャントの塞栓を施行した。これによって門脈血流は求肝性となり、腹水は減少し、食道静脈瘤に対してもEISを施行し得た。シアノアクリレート系医療用接着剤は、外科手術で幅広く利用されているが、本症例のごとく、APシャント塞栓術に用いても有用であると考えられた。
索引用語 APシャント, シアノアクリレート