セッション情報 | 一般演題 |
---|---|
タイトル | 舞踏様不随意運動を呈した肝性脳症の1例 |
演者 | 日暮 琢磨(横浜労災病院 消化器科) |
共同演者 | 渡邊 誠太郎(横浜労災病院 消化器科), 吉濱 小百合(横浜労災病院 消化器科), 谷 理恵(横浜労災病院 消化器科), 川名 憲一(横浜労災病院 消化器科), 中村 篤志(横浜労災病院 消化器科), 永瀬 肇(横浜労災病院 消化器科), 五十川 孝志(横浜労災病院 神経内科), 中山 貴博(横浜労災病院 神経内科), 今福 一郎(横浜労災病院 神経内科), 藤原 研司(横浜労災病院 病院長) |
抄録 | 肝性脳症は肝硬変の進行に伴い出現するものが多く、意識障害が主な症状である。今回我々は、舞踏様不随意運動により発症した肝性脳症の症例を経験したので報告する。症例は74歳女性。2002年に自己免疫性肝炎による肝硬変を指摘され、以後ウルソデオキシコール酸(UDCA)内服で肝機能も安定し経過良好であった。2005年5月2日頃から持っていたものを落とす、顔を叩くなどの舞踏様運動が出現し、飲食や入眠困難な状態となり、精査加療目的で入院となった。入院時、意識はほぼ清明であったが、顔面、四肢を含む全身の著しい舞踏様運動を認めた、血液検査上、Hb9.6g/dl、PLT8.5万と低下を認め、またAST53IU/l、ALT32 IU/l、ALP350 IU/l、T-Bil2.21mg/dlなど肝機能の軽度異常も認めたが、経時的に大きな変動はなかった。空腹時血糖は104mg/dl、アンモニアは73μg/dlと上昇を認めなかったが、Fisher比は0.71と低下を認めた。頭部CT、脳血流シンチグラムでは明らかな異常を認めなかった。脳波は徐波主体であった。肝硬変以外に器質的病変や代謝性疾患を認めなかったことから、舞踏病様症状は肝性脳症が原因である可能性が考えられた。分岐鎖アミノ酸製剤、塩酸チアプリドの投与を開始したところ、血中アンモニアは次第に上昇したが、Fisher比の改善に伴って舞踏様運動は消失した。塩酸チアプリド中止後も症状の再発なく、以後外来通院治療となり、分岐鎖アミノ酸製剤継続により舞踏様症状の出現を認めていない。肝性脳症は意識障害を主症状とし、羽ばたき振線などを伴うことがある。本邦において慢性肝疾患に伴う典型的な舞踏様不随意運動の報告はインターフェロン治療に合併したものなど数件に過ぎず、肝性脳症の症状と考えられたのは1例のみであり、本症例は極めて稀な症例と考えられた。舞踏様不随意運動の原因として、Wilson病などの代謝性肝疾患の鑑別が必要であるとともに、肝性脳症の可能性も考える必要があることが示唆された。 |
索引用語 | 肝性脳症, 舞踏様症状 |