セッション情報 |
パネルディスカッション8(肝臓学会・消化器病学会合同)
東アジアにおける肝疾患の問題点と治療の特色
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タイトル |
肝PD8-6:開発途上国ネパールにおけるB型肝炎診療の実態
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演者 |
正木 尚彦(国立国際医療研究センター・肝炎・免疫研究センター) |
共同演者 |
P. K. Shrestha(Department of Medicine, Teaching Hospital, Tribhuvan University, Nepal), 溝上 雅史(国立国際医療研究センター・肝炎・免疫研究センター) |
抄録 |
【目的】東アジアの諸国ではB型肝炎ウイルス(HBV)のキャリア率がきわめて高率である。近年、ラミブジン(LMV)、アデホビル(ADF)、エンテカビル(ETV)、テノホビル(TDF)等の核酸アナログ製剤(NA)が導入されているが、深刻な貧困のため安価な後発医薬品が出回り、かつ、ウイルス学的モニター体制が不完全であるため、NA耐性ウイルスの蔓延が危惧される。今回、ネパールにおけるB型肝炎診療の実態を検討した。【方法】患者を連続的に登録し、各種背景因子、NA投与状況を調査した。保存血清を日本へ持ち帰り、HBVマーカー(HBsAg, HBeAg, HBeAb, HBV DNA量、遺伝子型、NA耐性)を測定した(現地ではHBsAg、HBeAg、HBeAb定性のみ測定可能)。【成績】1)登録57例:男性40例/女性17例;32±14歳[16~71:平均±標準偏差] 2)HBeAg/HBeAb:+/- 27例;+/+ 1例;-/- 1例;-/+ 26例 3)HBV DNA量[logcopy/ml]:~3.9/4.0~6.9/7.0~=22例/13例/22例 4)HBV遺伝子型:A(Aa) 11例;C 14例;C/D recombinant 1例;D 26例;検出されず 5例 5)NA投与36例:LMV単独 15例;ADF単独2例;LMV+ADF併用5例;TDFへ切り替え4例;TDF単独10例(TDF投与例が40%)。NA投与例[29±12歳]は非投与例[39±15歳]に比して若年で、NA投与率は女性[88%=15/17]の方が男性[53%=21/40]より高率。6)NA耐性:LMV単独投与3例に検出された[M204V+L180M(32歳女性、27ヶ月目)、M204I(28歳女性、6ヶ月目)、M250I(21歳男性、ETV耐性、25ヶ月目)]。【結論】医療保険の無いネパールでは、初回の処方箋があればNAの継続入手が可能で、外来フォローアップ率がきわめて低い。そのため、正確なNA耐性出現率を把握することは困難である。挙児可能年齢層への安易な処方方針も是正されるべきである。ウイルス学的モニター体制が不完全な開発途上国では、4年目までの耐性出現率が皆無とされるTDFへのシフトは許容されるべきと思われる。 |
索引用語 |
B型肝炎, 核酸アナログ製剤 |