セッション情報 パネルディスカッション9(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

原因不明消化管出血の診断と治療―顕在性(Overt) vs 潜在性(Occult)

タイトル 内PD9-1:

当科における原因不明消化管出血の診断について

演者 林田 真理(杏林大・3内科)
共同演者 齋藤 大祐(杏林大・3内科), 高橋 信一(杏林大・3内科)
抄録 【目的】本邦における原因不明消化管出血の定義は、上部・下部内視鏡検査を行っても原因不明の消化管出血である.原因不明消化管出血は、顕在性出血や潜在性出血に大別されるが,厳密に区別して検討されることはこれまで少なかった.今回、我々は原因不明消化管出血を顕在性出血と潜在性出血とに厳密に区別した上で、それぞれの群における特徴を明らかにすることが目的である。【方法】2004年4月から2011年8月までに当科にてカプセル内視鏡検査を施行した原因不明消化管出血患者200名を対象に、顕在性出血群(さらに顕在性出血群は、on going群(O)とprevious群(P)に分類した)と潜在性出血群(occult群)に分類し、診断率や出血源について比較検討を行った.【成績】原因不明消化管出血患者200名の内訳は、O群は7名、P群は161名、またoccult群は32名であった。カプセル内視鏡検査を施行した際のHb値の比較では、O群では8.4±0.42 g/dl、P群は10.3±2.3g/dl、occult群では、11.2±0.28 g/dlであった。それぞれの群における出血源の診断率は、O群71%、P群45.3%、occult群31.1%とO群が最も高かった。原因疾患別では、O群では小腸出血2例 (33.2%)、十二指腸静脈瘤破裂、GIST 、Angioectasia、小腸外病変がそれぞれ1例(16.7%)であった。P群では、NSAIDs小腸潰瘍を含めた小腸潰瘍がもっとも多く18(29.0%)、ついでangioectasia15例(24.2%),さらにクローン病5例(8.0%),メッケル憩室、転移性小腸腫瘍がそれぞれ3例(4.8%)の順に多く認めた。一方occult群では、angioectasia5例(45.4%)、GISTとさらに小腸潰瘍がそれぞれ2例 (18.1%)と最も頻度が高く、ついでメッケル憩室、悪性リンパ腫がそれぞれ1例 (9.2%)であった。【結論】原因不明消化管出血の診断を行う際は、潜在性出血群にも貧血の原因となる疾患が存在することを念頭において、精査を行う必要がある。
索引用語 カプセル内視鏡, 原因不明消化管出血