抄録 |
【目的】原因不明消化管出血(OGIB)に対しカプセル内視鏡(CE)は有用でありその診断アルゴリズムは施設間で若干異なるがCEが第一選択となりつつある.しかしCEのみで確定診断はできずその所見を通じバルーン内視鏡(BAE)適応の是非を検討する事が一般的であるためCE診断後の経過を検討しその妥当性を評価する必要がある.今回当施設での症例を通じ顕在性(ongoing overt, previous overt)OGIBと潜在性(occult)OGIBにおけるCE診断の相違点を検討しOGIBの病態別にCE診断を通じたアルゴリズムの妥当性を検証した.【方法】当院にCEが導入されて以来2012年2月までのOGIBによりCEが施行された202例(ongoing overt75例,previous overt91例,occult36例)をCE無所見群(C0),小所見(点状発赤や血管拡張)群(C1),粘膜傷害のみの非顕出血群(C2),顕出血群(C3),腫瘍性病変群(C4)に分け,また別にBAE非施行群(B0),BAE施行も無所見群(B1),有所見経過観察群(B2),止血処置施行群(B3),腫瘍性病変判明群(B4)に分けCE所見を通じた経過を照合し検討した.【成績】CE結果はongoing(C0/C1/C2/C3/C4;17.3%/8.0%/16.0%/33.3%/6.7%),previous(24.2%/27.5%/26.4%/7.7%/6.6%),occult(22.2%/22.2%/25.0%/8.3%/5.6%).CEで小腸外出血と判明したものはongoing18.7%,previous7.7%,occult16.7%.BAEはongoing(B0/B1/B2/B3/B4;57.3%/12.0%/8.0%/17.3%/5.3%),previous(69.2%/12.1%/7.7%/5.5%/5.5%),occult(75.0%/11.1%/2.8%/5.6%/5.6%).CE無出血例中BAE施行率はongoing19.4%,previous22.5%,occult24.0%.CE顕出血例中BAE止血率はongoing60.0%,previous28.6%,occult33.3%であった.【結論】OGIBの病態に関わらずCE無出血例でBAE施行率に差はなかった.Previous overt OGIBとoccult OGIBではCE診断を通じた成績はほぼ同等であった.Ongoing overt OGIBでCE出血診断,BAE止血率が高く発症早期のCE施行がOGIB診断アルゴリズム上有用である事が確認されたが止血後も再出血症例がありOGIB症例の適切なサーベイランスの検討が必要である. |