セッション情報 パネルディスカッション9(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

原因不明消化管出血の診断と治療―顕在性(Overt) vs 潜在性(Occult)

タイトル 内PD9-3:

原因不明消化管出血における小腸血管性病変・潰瘍性病変のリスクファクター

演者 酒井 英嗣(横浜市立大・消化器内科)
共同演者 遠藤 宏樹(横浜市立大・消化器内科), 中島 淳(横浜市立大・消化器内科)
抄録 【目的】カプセル内視鏡(CE)やバルーン内視鏡(BAE)の普及に伴って,原因不明消化管出血(OGIB)の病態が解明されつつある.しかし,顕在性(overt)と潜在性(occult)を厳密に区別した検討は少ない.そこで我々は多施設で症例を集積,overtとoccultを厳密に区別したうえで,小腸病変のリスクファクターを検討した.【方法】横浜市大病院,茅ヶ崎市立病院,横浜労災病院においてCEを施行したOGIB 242例を抽出,overt (149例)とoccult (93例)に分類し,血管性病変と潰瘍性病変に対して,年齢,性別,嗜好歴,出血から検査までの期間,輸血の有無,最低Hb値,合併症の有無(高血圧,糖尿病,虚血性心疾患,肝硬変,慢性腎不全),服薬歴(抗凝固薬,低用量アスピリン,NSAIDs,抗潰瘍薬,粘膜保護薬)をvariantとして,単変量・多変量解析を行った.【成績】Overt における血管性病変のリスクファクターは輸血の有無(OR, 2.24; 95% CI, 1.02-4.90, P=0.04),高血圧(3.24, 1.43-7.33, P=0.005),腎不全(4.98, 1.99-12.5, P=0.001)であり,年齢・性別を調整した多変量解析では腎不全(3.19, 1.12-9.11, P=0.03)のみ有意差を認めた.また,潰瘍性病変に関しては,単変量・多変量解析ともにNSAIDs内服(4.73, 1.47-15.2, P=0.009)のみがリスクファクターであった.一方,occultにおける血管性病変の有意なリスクファクターはなく,潰瘍性病変のリスクファクターは飲酒歴(2.89, 1.10-7.57, P=0.03), 喫煙歴(3.33, 1.28-8.72, P=0.01),低用量アスピリン内服(4.54, 1.76-11.7, P=0.002)であり,年齢・性別を調整した多変量解析では低用量アスピリン内服(5.76, 1.23-27.0, P=0.03)のみ有意差を認めた.【結論】基礎疾患や内服歴などの患者背景と出血様式を考慮することで,ある程度原因疾患を推測できる可能性がある.慢性腎不全患者でovert OGIBを認めた場合,血管性病変を出血源として疑う必要がある.また,潰瘍性病変の出血様式として,NSAIDsはovert,低用量アスピリンはoccult となる傾向があることが示された.
索引用語 原因不明消化管出血, カプセル内視鏡