セッション情報 パネルディスカッション9(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

原因不明消化管出血の診断と治療―顕在性(Overt) vs 潜在性(Occult)

タイトル 消PD9-4:

潜在性消化管出血例におけるカプセル内視鏡の意義 - ネットワーク登録症例の解析 -

演者 光藤 章二(京都九条病院・消化器内科)
共同演者
抄録 【目的】われわれは大学関連施設間で,カプセル内視鏡診断ネットワークを構築している.このネットワーク登録症例を用いて,OGIBの臨床像を解析し,特に潜在性出血例におけるカプセル内視鏡の意義について検討した.【方法】2008年8月から2012年2月までにネットワークに登録された309例のうち,OGIB精査を目的とした247例を顕在性出血(Ov群)144例,潜在性出血(Oc群)103例に分け,病変検出率,出血責任病巣,最低Hb値,アスピリン製剤を含むNSAID服用との関連性等を比較,検討した.【成績】Oc群の91.4%は便潜血陽性に加え貧血を伴っていた.活動性出血は9例で見られ,うち1例はOc群で,便潜血陽性の原因となる微量出血を捉えていた.病変検出率はOv群40.3%,Oc群28.2%とOv群で有意(p<0.05)に高かった.出血責任病巣はOv群では潰瘍性病変33病変(55.9%),血管性病変20病変(33.9%),その他6病変(10.2%),Oc群では潰瘍性病変20病変(64.5%),血管性病変10病変(32.3%),その他1病変(3.2%)であった.Oc群で検査前最低Hb値の判明している79例のうち,出血源を確認できた22例の平均は7.9g/dl,確認できなかった57例の平均は8.5g/dlと有意な差は見られなかった.NSAID服用率はOv群では33.3%,Oc群では27.2%で,NSAID服用患者のうちNSAID起因性小腸粘膜傷害と診断された症例はOv群では35.4%,Oc群では35.7%と同等であった.また,Oc群で貧血のない4症例がNSAID起因性小腸粘膜傷害と診断されていた.【結論および考察】病変検出率はOv群で有意に高かったが,Oc群でもHb値に関わらず,4例に1例の割合で小腸に出血責任病巣が発見された.また,NSAID服用患者では顕性出血の有無を問わず,一定の割合でNSAID起因性小腸粘膜傷害が見られた.カプセル内視鏡は,潜在性出血例においても出血責任病巣の検出において意義のある検査であると考えられた.今後は,貧血のない潜在性出血例におけるカプセル内視鏡の意義を検討する必要があろう.
索引用語 潜在性消化管出血, カプセル内視鏡