セッション情報 パネルディスカッション9(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

原因不明消化管出血の診断と治療―顕在性(Overt) vs 潜在性(Occult)

タイトル 消PD9-5:

出血症状別によるダブルバルーン内視鏡による原因不明消化管出血の診断

演者 三井 啓吾(日本医大・消化器内科)
共同演者 小林 剛(日本医大・消化器内科), 坂本 長逸(日本医大・消化器内科)
抄録 【背景】カプセル内視鏡(CE)やバルーン内視鏡(BAE)によって,原因不明の消化管出血(OGIB)の診断は容易となったが,これまでの画像診断も含めた効率的な診療戦略が重要と思われる.出血症状のパターンにより,異なった診断手順を取るべきかに関しての情報は乏しい.
【目的】OGIBの出血症状別による診断の差異を明らかにし,より効率的な検査手順を検討する.
【対象・方法】2003年7月より当科で原因不明の消化管出血に対してダブルバルーン内視鏡(DBE)が施行された症例において,出血症状のパターン,出血源の同定率,診断内訳などを遡及的に検討した.尚,OGIBは2000年AGA technical reviewの定義に依った.
【結果】全215例のOGIB患者でDBEによる精査が行われた.平均年齢61.8(19-90)歳,男性136例,女性79例.出血パターンはOvert bleeding が181例(84.2%),Occult bleedingが34例(15.8%)であった.
111例(51.6%)で出血源の同定が可能であった.病変タイプ別に,潰瘍性病変が35例(31.5%),腫瘍性病変が31例(27.9%),血管性病変が30例(27.0%),憩室が6例(5.4%),小腸外病変が9例(8.1%)であった.Occultでは18/34例(52.9%),Overtで93/181例(51.4%)で出血源の同定率が可能で,両群に差は認めなかった. Overt ongoing群 vs. Overt-previous群で,主要な診断群である腫瘍性・潰瘍性・血管性を比較したところ,Ongoing群で血管性病変が多く,潰瘍性病変previous群で高頻度であった(8:2:16 vs. 16:26:10)).
【結論】出血パターンで出血源の診断能に差を認めなかったが,顕出血例ではOngoing症例では,内視鏡治療を必要とする血管性病変が多く,previous症例では,X線造影検査が診断に有用とされる潰瘍性病変が多く認められ,出血パターンによって,X線造影などこれまでのモダリティを優先することも有用である可能性が示唆された.
索引用語 小腸, 出血