抄録 |
【背景と目的】カプセル内視鏡(CE)とバルーン内視鏡(BAE)の普及により原因不明消化管出血(OGIB)に対する診断,治療は飛躍的に向上したが,顕在性(Overt)と潜在性(Occult)を区別した多施設での検討は少ないのが現状である.【対象と方法】2012年2月までに当院および関連3施設において診断,治療を行ったOGIB300例に対してOccult(Oc)群とOvert(Ov)群に区別し,検査方法と有所見率についてRetrospectiveに検討を行った.またCE導入前39例と導入後261例におけるBAEによる有所見率の変化,CE導入後のBAE施行頻度についても検討した.【成績】OGIB300例中Oc群120例,Ov群180例(うちprevious142例,on going38例)であり,各施設間での内訳に有意差は認めなかった. 有所見率はOc群24/120(20%),Ov群101/180(56%)であり,Ov群において有意に高かった.(p<0.0001)さらにOv群のうちon going群とprevious群で検討したところon going群において有意に高かった。(P=0.0068)また有所見をびらん・潰瘍,憩室,血管性病変,腫瘍に分類し検討したところ両群ともびらん・潰瘍が最も多く,両群間に有意差を認めなかった.CE導入前は全例にBAEを施行していたが導入後は86/241(36 %)であった.このうち有所見率は導入前15/39(38%)と比較し導入後は54/86(63%)と有意に上昇していた.(P=0.012) CE導入後はOc群103/106(97%) Ov群137/155(88%)にCEが先行で施行されておりOc群で有意に高頻度(P=0.0063)であった.一方DBEはOv群65/155(42%),Oc群32/106(30%)に施行されており,Overt群が高い傾向にあったが有意差は認めなかった.(P=0.053)【結論】OGIBの診断にCEはBAEの有所見率を上昇させるため先行して行う価値がある.特にOc群においては有所見率が低く,CEをまず優先させることが望まれる. |