抄録 |
【背景】ソラフェニブは腫瘍の血管新生阻害の他,drug delivery systemを正常化し殺細胞性薬剤の抗腫瘍効果を増強する可能性が考えられる.血管新生が腫瘍の発生,増大に関与するといわれる肝細胞癌(HCC)においても殺細胞性薬剤と分子標的薬の併用は有効と考えられ,今回,高度進行肝癌に対する5-FU+ソラフェニブ併用療法を考案した.【方法】本試験は当院の倫理委員会で承認された内容に基づいて行った.患者選択基準(抜粋)は以下のとおりである(1)Child-pugh分類 A(2)PSが0か1.主要評価項目を用量制限毒性(DLT)の発現(MTDおよびRDの推定)とし副次評価項目として(1)有害事象(2)抗腫瘍効果を検討.治療プロトコールは28日間を1サイクルとして実施.ソラフェニブは連日800mg経口投与を行い,5-FUは週5日間,24時間持続静注にて投与する.標準的な3例コホート法の試験デザインに従って各用量Levelに組み入れ安全性を評価している.【成績】2011年10月で全ての登録を終了している.TNM stageはIVBが11例、IIIが1例である.主要評価項目はLevel 1では登録3例でDLT発現は認めず,Level 2でも登録3例でDLT発現は認めなかったがLevel 3で3例中2例のDLTを認め,更に3例を追加登録し最終的に6例中2例のDLT発現で終了している.副次評価項目では(1)有害事象は手足症候群Grade 3が1例,Grade 2が5例,口内炎Grade 3が1例,血小板減少Grade 3が1例等であった(2)抗腫瘍効果はLevel 1ではSD1例, PD2例であり,Level 2ではSD3例,Level 3ではSD6例であった.本試験の評価項目とは外れるが,現時点での腫瘍増悪までの期間(TTP)は5.9ヶ月であり同時期に施行したHCCに対するソラフェニブ単独療法(n=95)の3.0ヶ月に比して延長を認めている(P<0.05).【結論】本研究で併用試験の忍容性は確認された.Level 2の5-FU容量を推奨用量とし,今後,臨床第相II試験を実施,ソラフェニブに殺細胞性薬剤を併用することが抗腫瘍効果の増強につながることを検証していく予定である. |