セッション情報 パネルディスカッション9(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

原因不明消化管出血の診断と治療―顕在性(Overt) vs 潜在性(Occult)

タイトル 内PD9-14:

原因不明消化管出血(OGIB)の診断におけるカプセル内視鏡、ダブルバルーン内視鏡の有用性

演者 大宮 直木(名古屋大大学院・消化器内科学)
共同演者 中村 正直(名古屋大大学院・消化器内科学), 後藤 秀実(名古屋大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】OGIBの診断におけるカプセル内視鏡(VCE)、ダブルバルーン内視鏡(DBE)の有用性を検討する。【対象】2003年6月~2011年12月にOGIBでDBEを施行した492例(男性290例・女性202例、年齢61±18歳)。【結果】492例中、顕在性出血は441例(最低Hb 7.8±2.5g/dL)、潜在性出血(原因不明の鉄欠乏性貧血含む)は52例(最低Hb 8.7±2.8g/dL)。総合診断で小腸病変は319例(65%)、小腸外病変は105例(21%)、原因不明・異常なしは68例(14%)。小腸出血319例中の顕在性出血は278例(87%)、潜在性出血は41例(13%)。顕在性出血では血管性病変が98例(35%)、慢性炎症性病変が68例(24%)、医原性病変が39例(14%)でそのうちNSAID起因性は24例(9%)、腫瘍性病変が44例(16%)、憩室29例(10%)。潜在性出血では血管性病変が8例(20%)、慢性炎症性病変が15例(37%)、医原性病変が5例(12%)で全例NSAID起因性、腫瘍性病変が12例(29%)、憩室1例(2%)。血管性病変、憩室は顕在性出血が多く、慢性炎症性病変、腫瘍性病変は潜在性出血の割合が多めで、NSAID起因性含めた医原性病変はほぼ同じ割合であった。小腸出血におけるDBE診断能は94%(300/319)で、診断不能であった19例のうち顕在性出血は18例、潜在性出血は1例であり、癒着による挿入困難、自然止血後がその原因と考えられた。VCE診断能は77%(129/167)で、診断不能であった38例のうち顕在性出血は34例、潜在性出血は4例であり、上部小腸病変、粘膜下腫瘍、憩室の見落とし、病変未到達等がその原因と考えられた。潜在性出血におけるDBEとVCEの診断能は90%と同等であったが、顕在性出血においてDBEの診断能は93%、VCEの診断能79%と有意差を認めた(P=0.001)。持続性顕在性出血(ongoing overt OGIB)にて緊急検査を施行した21例においてDBEの診断能は95%、VCEの診断能67%と有意差はなかった(P=0.08)。【結論】潜在性、顕在性問わず小腸出血において非侵襲的なVCEはスクリーニングに、DBEは精査に有用である。
索引用語 小腸出血, ダブルバルーン内視鏡