抄録 |
消化管間質性腫瘍(GIST)の診断と治療は、この10年で大きく変化した。特に、imatinibによる“patient Zero”の報告は、GISTの治療概念を大きく変化させた。GISTの病態・原因にcKIT分子が大きく関与し、診断、治療、予後について遺伝子診断に基づく治療体系が確立されてきた。また、創薬においても、imatinib、sunitinib、regorafenibやmTOR阻害剤、PI3K阻害剤など種々の分子異常に基づく試験が行われており、分子標的治療開発のテキスト的な位置づけとされている。しかし、現在の薬物療法だけではやがて薬物耐性が生じ、予後改善には限界があることも示され、手術療法やほかの局所治療との集学的な治療が重要である。その中で未解決な問題も多く存在する。1)切除可能GISTにおいても、高リスクGISTは、手術単独では、完全切除(R0)後でも50%以上が再発する。アジュバント治療に関しては、SSG18AIO試験で3年間のアジュバント治療は無再発生存期間の延長に加え、全生存を改善することが示された。しかし、適切な治療対照群は不明確で、また、適正化治療期間も不明である。2)局所進行GISTに対するネオアジュバント治療やimatinib治療中の外科治療に関しては、確立されたエビデンスは無く、外科介入が長期予後を改善するかどうか不明である。Imatinibを中心とした治療がGISTの予後を劇的に改善し、あらたな治療の体系が確立されたことは間違いない。Pivotal trialを示しながら現時点でのGISTの診断と治療をまとめて報告する。 |