セッション情報 パネルディスカッション10(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

消化管GIST治療の進歩と長期予後

タイトル 外PD10-1:

経過観察中に増大傾向を認めた無症状胃SMTに対する外科切除意義

演者 宮崎 安弘(大阪大・消化器外科)
共同演者 中島 清一(大阪大・消化器外科), 土岐 祐一郎(大阪大・消化器外科)
抄録 【背景】GIST診療ガイドラインにおける胃粘膜下腫瘍(SMT)の治療方針では,無症状かつ生検陰性で腫瘍径2cm未満,あるいは腫瘍径2~5cmでEUS-FNAB未施行かつ悪性所見がないものに対しては,年1~2回程度の経過観察が勧められている.一方,無症状ながらも経過観察中に腫瘍径の増大傾向を認める症例(以下,増大例)は相対的手術適応とされ,鏡視下手術を含む外科切除がオプション治療として記載されている.
【目的】当科で経験した増大例の臨床病理学的特徴ならびに手術成績,予後を明らかにする.
【方法】2005年~2011年に切除術を施行した胃SMT 77例のうち増大例20症例を対象に後方視解析を行った.
【成績】男女比は12:8,手術時年齢中央値は64 (48-74) 歳であった.全例が検診発見で,腫瘍の占拠部位は胃上部/中部/下部:10/6/4であった.発見時の腫瘍径は2.0 (0.8-4.0) cmで, 63 (8-181) か月間の経過観察中に3.5 (2.0-7.0)cmまで増大した.術式は胃部分切除術19例,噴門側胃切除術1例であり,部分切除のうち17例(89%)が腹腔鏡下に手術を完遂した.手術時間115 (49-214) 分,出血量20 (0-230) mlであり,重篤な術後合併症を認めなかった.病理診断の結果,20例中2例が神経鞘腫,残りの18例はGISTであった.これらGIST症例は,Fletcherリスク分類上,超低リスク/低リスク/中間リスク/高リスク:0/13/3/2であった.術後26.0 (4.6-75.1) か月経過の時点で全例が無再発生存中である.
【結論】経過観察中に増大傾向を認めた無症状胃SMTに対しては,専ら低侵襲アプローチ(腹腔鏡)が行われ手術成績も良好であった.これらの症例には中間・高リスク例が少数ながら存在することが明らかになり,無症状ながらも腫瘍径の増大を認める症例に対しては,積極的な外科切除を検討すべきと考えられた.
索引用語 胃SMT, GIST