セッション情報 一般演題

タイトル 2:

Rituximab投与にてHBV増殖を認めた悪性リンパ腫の2例

演者 渋谷 仁(横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター)
共同演者 野崎 昭人(横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター), 近藤 正晃(横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター), 森本 学(横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター), 沼田 和司(横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター)
抄録 症例1は72歳男性。GFにて胃角部に潰瘍性病変が指摘され、精査の結果、胃原発悪性リンパ腫(DLBCL)と診断された。CHOP療法を6コース施行後、Rituximab単独療法を6コース施行した。術前の検査でHBs抗原陰性であったが、化学療法終了1ヵ月後より肝機能増悪を認めた。HBs抗原は陽性化しHBV-DNAも7.6log以上となっていた。エンテカビル投与を開始したものの、肝機能は改善せず、入院の上、PSL投与、on-line CHDFを含めた集中治療を施したが、改善せず死亡した。症例2は42歳女性。 人間ドックの腹部US検査で異常を指摘され、当センター紹介受診した。開腹リンパ節生検の結果、膵頭部原発の悪性リンパ腫(follicular lymphoma)と診断された。HBs抗原陽性が判明していたため、HBV-DNAは3.7log未満と検出感度以下であったが、ラミブジンの予防内服を開始した。CHOP療法計7コース行った後、Rituximab単独療法を6コース施行し完全寛解となった。化学療法開始から一貫してHBV-DNAは測定感度以下であったため、化学療法終了後24週でラミブジンを中止した。しかし、3ヶ月後にHBV-DNAが3.8log→4.4logと陽転化及び増加したため、エンテカビルを開始し、以後肝機能増悪を認めずに再度HBV-DNAは陰転化した。現在までエンテカビルは継続しており増悪は認めていない。Rituximab投与によるHBV再活性化の報告が、全世界で相次ぎ大きな問題となっている。特に症例1のように化学療法前にHBs抗原陰性例での死亡例も相次いでいる。現在では、化学療法施行前にHBs抗原の他、HBV-DNA定量、HBs抗体、IgG-HBc抗体までチェックし、HBs抗原陰性例でもHBV-DNAが陽転化した時点で核酸アナログの投与を開始している。HBs抗原陽性例では、少なくとも化学療法開始1週間前より核酸アナログの投与を開始しており、終了後24週以上HBV-DNA陰性が維持できれば、核酸アナログを中止する方針としていたが、症例2のような例も報告されつつあり、中止時期については今後議論を要すると考えられた。
索引用語 Rituximab, HBV