セッション情報 一般演題

タイトル 94:

鏡視下手術が有用であった興味深い成人腸重積の1例

演者 赤津 知孝(荻窪病院 外科)
共同演者 井上 孝隆(荻窪病院 外科), 矢部 信成(荻窪病院 外科), 村井 信二(荻窪病院 外科)
抄録 小児科領域において腸重積は比較的頻度の高い疾病であるが、成人では非常にまれである(腸重積患者全体の約5%)。今回、我々は盲腸腺腫を原因とする腸重積に対して鏡視下手術が有用であった症例を経験したので報告する。患者は31歳、女性。繰り返す腹痛で当院を受診した。腹部CT検査では右上腹部に大腸の重積像、遠位側に径3cm大の腫瘤を認めた。注腸検査では横行結腸の肝彎曲部に腫瘤が存在した。整復が不完全であったことから緊急で鏡視下手術を施行した。右半の大腸を授動した後、鏡視下に重積部を完全解除した(病変部は浮腫性に肥厚していたが壊死を認めず)。右下腹部に小切開創を置き病変部のみを部分切除した。切除標本の病理診断は腺種であった。本症例は以下の3点でユニークであった。1.(S状結腸などとは異なり)右側の結腸は後腹膜に固定されているため重積が起こりにくいとされているが、本症例ではそれが起こったこと。2.重積範囲が盲腸から横行結腸肝彎曲部まで非常に広範であったこと。3.先進部は5cm以上の大きな病変であることが多いが、本症例は比較的小さかったこと。成人腸重積の治療に関しては(特に高齢者では)悪性の頻度が高く、整復時に腸管が破裂してしまうリスクがあることから、整復を行わずに腸管をen blocに大量切除するケースも少なくないが、本症例では必要最小限の切除で済ませることが可能であった。今回の経験から成人腸重積の診断・治療において鏡視下手術が非常に有用なツールとなることが示唆された。今後症例を重ねて検討していく必要がある。
索引用語 腸重積, 鏡視下手術