セッション情報 一般演題

タイトル 33:

抗凝固療法中に出血をきたして腹腔内巨大腫瘤を形成した、肝十二指腸間膜血管腫の一例

演者 大友 夏子(東京大学 医学部 附属病院 消化器内科)
共同演者 富谷 智明(東京大学 医学部 附属病院 消化器内科), 田上 靖(東京大学 医学部 附属病院 消化器内科), 井上 有希子(東京大学 医学部 附属病院 消化器内科), 西川 尚子(東京大学 医学部 附属病院 消化器内科), 小田島 慎也(東京大学 医学部 附属病院 消化器内科), 小俣 政男(東京大学 医学部 附属病院 消化器内科), 渡邉 尚子(東京大学 医学部 附属病院 検査部), 池田 均(東京大学 医学部 附属病院 検査部), 青木 琢(東京大学 医学部 附属病院 肝胆膵・人工臓器移植外科), 國土 典宏(東京大学 医学部 附属病院 肝胆膵・人工臓器移植外科)
抄録 症例は47歳男性。2007年8月に大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁置換術・冠動脈バイパス術を施行され、ワーファリン、バイアスピリンの内服が開始された。なお、術前検索の腹部造影CTでは、肝十二指腸間膜から肝円索下部にかけて、結合織内に水濃度成分と脂肪濃度成分の混在する長径4 cm大の領域を認めたが放置されていた。2008年11月末、座位での事務作業中に下腹部痛が出現。腹痛は増強して上腹部、背部へと拡大したため、12月3日、当院消化器内科外来受診。腹部エコーにて、肝左葉と胃の間に10 cm大の不均一な腫瘤を認めた。腫瘤の一部は大小不同の嚢胞状構造を呈し、内部に充実成分を伴っていた。CTでは、肝門部から胃前庭部周囲を首座とする10 cm大の腫瘤を認め、単純CTで等~高濃度を示し、造影効果は乏しかった。腫瘤上縁は境界不明瞭であったが、周囲臓器への明らかな浸潤像はなく、正常構造を保った血管が内部を貫通していた。MRIではT1強調像で辺縁高信号、内部が水よりわずかに高信号を示す嚢胞状構造を有し、T2強調像では比較的均一な軽度高信号を示した。鑑別診断として、出血によって増大したリンパ管腫、脱分化した脂肪肉腫、悪性リンパ腫などが挙げられた。2009年1月、当院肝胆膵外科にて開腹生検を行った。腫瘤は青色調の被膜に覆われ、術中エコーでは、隔壁を有する嚢胞状構造を示し、充実部分も小嚢胞の集合体として描出された。充実部分から組織片を採取した。病理所見は、線維脂肪組織内に不整な拡張蛇行を示す静脈の増生があり、静脈性血管腫との診断がなされた。抗凝固療法下で血管腫からの出血をきたし、結合織内に巨大血腫を形成したものと考えられた。抗凝固剤の減量により、2ヶ月後には縮小傾向となった。腫瘍の内外に出血して症状を呈し診断される血管腫の報告は、脳外科領域や小児領域で散見されるが、成人の腹腔内血管腫は比較的稀である。悪性腫瘍との鑑別が必要な場合もあり示唆に富むと考え、ここに報告する。
索引用語 血管腫出血, 抗凝固療法