セッション情報 一般演題

タイトル 21:

肝梗塞をきたして,無治療でコントロールされている門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌の1例

演者 星野  優(東京都済生会中央病院 内科)
共同演者 中澤  敦(東京都済生会中央病院 内科), 鳩貝  健(東京都済生会中央病院 内科), 岩崎 栄典(東京都済生会中央病院 内科), 前田  憲男(東京都済生会中央病院 内科), 重松  武治(東京都済生会中央病院 内科), 水城  啓(東京都済生会中央病院 内科), 古賀  清子(東京都済生会中央病院 放射線科), 古寺  研一(東京都済生会中央病院 放射線科), 塚田  信廣(東京都済生会中央病院 内科)
抄録 症例は60歳男性.B型慢性肝炎にて経過観察中1990年に,肝細胞癌に対して他院で肝右葉切除術を施行された.その後,2000年に肝細胞癌の再発を認めてcryoablationを施行された.2001年にもcryoablationを施行されたが,その後は通院を自己中断していた.2007年10月中旬頃より黒色便を認めて,当院救急外来を受診.上部内視鏡を施行し,穹隆部に多量の凝血塊を伴う隆起性病変を認め,胃静脈瘤の可能性も考えてSengstaken-Blakemore Tubeによる圧迫処置を施行した.第3病日に38℃台の発熱とともにAST 4560 IU/L, ALT 6380 IU/L, LDH 11700 IU/L, Alp 1956 IU/Lと肝・胆道系酵素の著明な上昇を認め,CTでは肝S4に楔状に広がる低吸収域を認めて肝梗塞と診断した.また,門脈臍部には造影効果を伴う腫瘤を認めて,肝細胞癌にともなう腫瘍塞栓と考えた.発症早期であることよりヘパリンの投与を開始して,肝・胆道系酵素は著明な改善を認め,ワルファリンに変更した.第11病日に再び黒色便を認めて,内視鏡にて胃静脈瘤より出血を確認,内視鏡的静脈瘤結紮術を施行した.12月に再入院の上ballon occluded retrograde obliteration (BRTO)を行った.術後4日目のCT・内視鏡では胃静脈瘤の縮小を認めた.その後,2008年3月に肝梗塞後の部位に肝膿瘍を合併したが,経皮的ドレナージにより改善を認め,門脈臍部の腫瘍塞栓は著変なく経過している.門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌は無治療では生存期間中央値が2.7ヶ月と予後不良とされている.本症例は診断後約15ヶ月経過しているが,腫瘍の増大はみられていない.肝臓は肝動脈と門脈の二重血行支配のため肝梗塞は比較的まれであるが,本症例ではその発症が肝細胞癌の進展に影響を及ぼしている可能性が推測され,示唆に富む症例と考え報告する.
索引用語 肝梗塞, 門脈腫瘍栓