| セッション情報 | 一般演題 |
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| タイトル | 90:腹部単純X線で石灰化を認めない静脈硬化性腸炎の1例 |
| 演者 | 田畑 拓久(東京都立駒込病院 消化器内科) |
| 共同演者 | 小泉 浩一(東京都立駒込病院 消化器内科), 桑田 剛(東京都立駒込病院 消化器内科), 来間 佐和子(東京都立駒込病院 消化器内科), 安食 元(東京都立駒込病院 消化器内科), 藤原 崇(東京都立駒込病院 消化器内科), 江川 直人(東京都立駒込病院 消化器内科) |
| 抄録 | 症例は70歳男性、大酒家で高血圧と高尿酸血症の既往を有する。10年程前から右側腹部の鈍痛をしばしば自覚していた。2008年12月中旬、右側腹部痛の増悪と血便を認め、2009年1月20日、精査・加療目的に当科紹介入院となった。血液検査では貧血や炎症反応の上昇はみられず、腹部単純X線でも明らかな異常所見は認められなかった。CT検査では上行結腸に多数の憩室と壁肥厚を認め、注腸造影検査では横行結腸の一部に壁硬化像を認めた。下部消化管内視鏡検査を施行したところ、盲腸から下行結腸まで連続性に血管透見像の消失した光沢のない暗黒色調の粘膜が観察された。これらの所見は肛門側へ向かうに従い徐々に軽減し、S状結腸や直腸では粘膜の色調および血管透見像はほぼ正常に観察された。右側結腸を主体とした病変であることや特徴的な粘膜色調変化から、静脈硬化性腸炎が疑われ生検を行った。生検病理では、粘膜固有層および粘膜下層の小血管周囲や間質への硝子様物質の沈着と血管壁の線維性肥厚が認められ、静脈硬化性腸炎に矛盾しない所見であった。静脈硬化性腸炎の診断で保存的に経過観察したところ、右側腹部痛は自然軽快し、現在外来にて経過観察中である。静脈硬化性腸炎は、静脈硬化症による慢性の血液環流異常によって生じる虚血性腸炎であり、下部消化管内視鏡検査での粘膜色調変化と腹部単純X線での右側結腸周囲の石灰化を特徴とする。特に腹部単純X線での石灰化は静脈硬化性腸炎の9割以上の症例でみられると報告されており、診断的価値が高い。本症例では下部消化管内視鏡検査で特徴的な粘膜色調変化を呈していたが、腹部単純X線で石灰化は認められず、静脈硬化性腸炎の初期病変である可能性が考えられ示唆に富む症例と思われた。当科で経験した他の静脈硬化性腸炎症例との比較検討を行い、若干の文献的考察を含め報告する。 |
| 索引用語 | 静脈硬化性腸炎, 石灰化 |