セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
31:閉塞性黄疸解除のために膿瘍および胆道ドレナージを必要としたアメーバ巨大肝膿瘍の1例
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演者 |
岸川 孝弘(総合病院国保旭中央病院 内科) |
共同演者 |
蔵本 浩一(総合病院国保旭中央病院 内科), 中村 朗(総合病院国保旭中央病院 内科), 志村 謙次(総合病院国保旭中央病院 内科) |
抄録 |
症例は36歳のタイ人男性。5年前から日本に移住し清掃業を営み、パートナーは特定女性とのみであった。入国直後から時折血性下痢を認めていたが、一週間の経過で全身倦怠感、発熱、腹痛、背部痛、黄疸が出現したため近医を受診した。CTにて巨大肝膿瘍を指摘され、経皮的膿瘍ドレナージを施行するも、黄疸の改善を認めないため当院転院となった。身体所見上黄疸と下半身主体の高度浮腫、血液検査上低Alb血症、肝胆道系酵素の上昇、凝固能異常を認めた。造影CTでは肝右葉を中心に15cm大の巨大膿瘍を認め、肝門部胆管圧排による末梢胆管の拡張、下大静脈の圧排所見を伴っていた。閉塞性黄疸解除のため、入院日にERCPによる経鼻胆道ドレナージを施行した。細菌性肝膿瘍の可能性も考慮しメトロニダゾール、バンコマイシン、メロペネム3種の抗菌薬を併用したが、血清抗アメーバ抗体が陽性と判明したためメトロニダゾール単剤に変更し計10日間投与を行った。膿瘍縮小に伴い黄疸、下半身浮腫の改善を認め、胆管圧排所見が解除されたためドレナージを抜去し、第18病日に退院した。 近年アメーバ肝膿瘍は海外渡航者、同性愛者に多く輸入感染症、性感染症としてやや増加傾向にあると言われている。本症例では来日前に母国で腸管アメーバ症に罹患したと思われる。症状として発熱、疼痛を伴うものの、細菌性肝膿瘍と比較して重症感に乏しいことが特徴であり、本症例も他臓器を圧排するほど巨大化するまで病院を受診しなかった。治療は10-14日間のメトロニダゾール経口投与が著効するため、ドレナージは一般に不要といわれているが、他臓器、腹腔へ穿破すると予後不良となるため、穿破の危険のある場合はドレナージの適応と考えられる。本症例は肝内胆管、下大静脈の圧排による閉塞性黄疸、高度浮腫が全身状態の悪化の原因となっており、ドレナージにて膿瘍径を縮小させる必要があったと思われる。 |
索引用語 |
肝膿瘍, アメーバ |