セッション情報 一般演題

タイトル 12:

スタチン製剤投与後に診断された自己免疫性肝炎の一例

演者 細江 隼(東京逓信病院 消化器科)
共同演者 大久保 政雄(東京逓信病院 消化器科), 光井 洋(東京逓信病院 消化器科), 山下 達也(東京逓信病院 消化器科), 仲地 健一郎(東京逓信病院 消化器科), 曽 絵里子(東京逓信病院 消化器科), 小林 克也(東京逓信病院 消化器科), 関川 憲一郎(東京逓信病院 消化器科), 橋本 直明(東京逓信病院 消化器科), 山口 肇(東京逓信病院 内視鏡センター), 鈴木 丈夫(東京逓信病院 放射線科), 岸田 由起子(東京逓信病院 病理科), 田村 浩一(東京逓信病院 病理科)
抄録 【症例】77歳女性。2006年11月に近医にて高脂血症のためフルバスタチン(ローコール(R))10 mg投与を開始された。2008年7月の採血にて肝胆道系酵素上昇を認め当科に紹介され、精査目的に9月入院となった。7月より倦怠感を自覚していたが、食事摂取は良好で発熱、腹痛、体重減少は認めなかった。【入院後経過】血液検査ではAST 462 IU/l,ALT 591 IU/l,γ-GTP 204 IU/l,ALP 520 IU/l,肝炎ウイルスマーカー陰性だった。画像所見では胆嚢結石を認めたが、胆嚢炎の所見はなく、薬剤性肝障害や自己免疫性肝疾患が鑑別診断に上がった。入院後フルバスタチンは服用中止とした。その後、IgG 2838 mg/dl,IgM 100 mg/dl,血沈 44 mm/h,抗核抗体160×,抗平滑筋抗体 160×,抗ミトコンドリア抗体陰性と判明し、自己免疫性肝炎(AIH)の可能性が強くなった。フルバスタチンのDLSTを提出したが、結果は陰性だった。第3病日に肝生検施行。肝小葉・門脈域へのリンパ球浸潤とpiecemeal necrosisを認め、慢性活動性肝炎の所見だった。PBC様の胆管病変も認めた。国際診断基準(1999)のスコアは10でprobable AIHに相当した。AIHによる肝障害に対し、第16病日よりプレドニソロン(PSL)40 mg開始した。第21病日の血液検査でAST 27 IU/l,ALT 80 IU/lと減少し、第23病日、IgG 1800 mg/dlと低下し、PSL 30 mgに減量。その後は順調にデータの改善を認め、第31病日にPSL 20 mg内服の状態で退院。以後は外来でPSLを5 mgまで減量して継続中で、現在まで病状の再燃は認めていない。【考察】本症例は、フルバスタチン服用開始後に出現した肝障害であり、DLSTは陰性であるが薬剤性肝障害の可能性も考えられる。一方、肝生検および血液検査所見よりAIHと診断し、PSL治療に良好に反応した。HMG-CoA還元酵素阻害剤によるAIHの発症が報告されており、本症例でもフルバスタチン服用がAIHの発症の契機となった可能性も考えられる。
索引用語 自己免疫性肝炎, 薬剤性肝障害