セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
60:アルカリ内服による食道瘢痕狭窄の1例
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演者 |
高山 和久(横浜市立大学 市民総合医療センター 高度救命救急センター) |
共同演者 |
荒田 慎寿(横浜市立大学 市民総合医療センター 高度救命救急センター), 森脇 義弘(横浜市立大学 市民総合医療センター 高度救命救急センター), 杉山 貢(横浜市立大学 市民総合医療センター 高度救命救急センター), 北村 剛彦(横浜えきさい会病院) |
抄録 |
【はじめに】市販のアルカリ性洗浄剤などの内服による消化管粘膜障害は良好な経過をとることが多い.石鹸を作成しようと約10年前に購入した苛性ソーダ(NaOH)内服による重篤な食道粘膜障害を経験したので報告する.【現病歴】症例は49歳,女性.夫との口論をきっかけに,99%苛性ソーダを希釈して(濃度不明)20~30 mL内服し,前医を受診した.来院後に頻回の嘔吐があり血液の混入を認め,穿孔の疑いで転院搬送となった.【来院時現症】意識はJCS10,口腔粘膜にびらん,咽頭・喉頭粘膜の浮腫を認めた.【初療経過】気道確保のために気管挿管し緊急上部内視鏡検査を施行した.下咽頭まで水疱形成,びらん,浮腫を認め,食道は全長にわたり全周性の潰瘍性病変を認めた.胃体部にも潰瘍形成あり出血を認めた.経内視鏡的に牛乳を投与した.尿の薬物反応は陰性であった.気管支内視鏡検査では異常を認めなかった.【入院後経過】PPI投与を開始しTPN管理とした.嚥下性肺炎を合併し抗菌薬治療を併用した.気管支ファイバーによる評価で咽頭・喉頭粘膜の浮腫が遷延し,長期気管挿管管理となったが,腫脹が消退し第11病日に抜管した.呼吸状態と飲水は問題なく,第12病日に上部内視鏡検査を施行した.上部食道は全周性にびらん様,易出血性で,35 cmに狭窄があり,ファイバー通過困難であった.第15病日の食道造影検査で同部位付近は6 mm前後の狭窄を呈していた.内視鏡検査,食道造影検査で経過を観察したが狭窄は進行し,嚥下困難感も出現した.絶食のまま,飲水も中止として食道再建術を予定し,他院で手術待期することとして第56病日に転院とした.【おわりに】当センターの薬物内服による食道再建の適応症例はいずれも苛性ソーダ内服例である.毒・劇物取扱法や薬事法で劇物と指定されている危険な薬品であるが,直接的な死亡をもたらすよりもこのような転帰をとることが多い.衝動的な行為を未然に防ぐため管理に注意が必要である. |
索引用語 |
アルカリ内服, 食道狭窄 |