共同演者 |
奥瀬 千晃(聖マリアンナ医科大学病院 消化器・肝臓内科), 中原 一有(聖マリアンナ医科大学病院 消化器・肝臓内科), 山田 典栄(聖マリアンナ医科大学病院 消化器・肝臓内科), 池田 裕喜(聖マリアンナ医科大学病院 消化器・肝臓内科), 小林 稔(聖マリアンナ医科大学病院 消化器・肝臓内科), 高橋 秀明(聖マリアンナ医科大学病院 消化器・肝臓内科), 片倉 芳樹(聖マリアンナ医科大学病院 消化器・肝臓内科), 松永 光太郎(聖マリアンナ医科大学病院 消化器・肝臓内科), 松本 伸行(聖マリアンナ医科大学病院 消化器・肝臓内科), 四柳 宏(東京大学 医学部 感染症内科), 鈴木 通博(聖マリアンナ医科大学病院 消化器・肝臓内科), 伊東 文生(聖マリアンナ医科大学病院 消化器・肝臓内科) |
抄録 |
【症例】67歳,男性.【現病歴】平成12年3月,前医にてC型慢性肝炎を指摘され,同年6月よりインターフェロンβ投与を施行されたが,眼底出血の発症にて中止となった.平成17年10月,C型慢性肝炎に対する経過観察目的にて当院紹介となった.【既往症】昭和58年,胆嚢摘出術.平成12年,2型糖尿病および眼底出血.輸血歴なし.【現症】腹部は平坦,軟で肝脾は触知せず.【検査所見】WBC 4700/μl, RBC 362×104/μl, Hb 12.2g/dl, Plt 21.5×104/μl, PT 92 %, Alb 4.1 g/dl, AST 38 IU/l, ALT 55 IU/l, γGTP 7 IU/l, FPG 159 mg/dl, Hb A1c 5.8 %, HCV serogroup 1型, HCV RNA量 110 KIU/ml(オリジナル法).【経過】同意が得られず肝生検は施行されていないが,臨床検査値より活動性C型慢性肝炎と考えられた.ペグインターフェロン・リバビリン併用療法の導入も検討されたが, FPG が150~200 mg/dlかつHb A1c が6.0~8.0 %で推移し糖尿病のコントロールが不良で,また眼底出血も治療を要する状況のため,ウルソデオキシコール酸(ウルソ)600mg/日の投与にて経過観察とした.ウルソ開始後もHCV RNA量は100 KIU/ml前後で推移し,肝酵素の変動は持続したが,平成19年8月にHCV RNA量は500 KIU/ml以上に急増し,引き続き同年10月には自然経過にて0.5 KIU/ml以下に著しく減少し,同時期に肝酵素の正常化を認めた.以後肝酵素は正常値で推移し,HCV RNA量は1.2 LogIU/ml未満・検出せず(TapMan法)の状態を持続している.【考案・結語】C型慢性肝炎におけるHCV RNAの自然消失は,報告によって頻度に若干の差異を認めるものの極めて稀な現象である.従って,実際の日常診療において経験する可能性が乏しいことから,その詳細は明らかとなっていない.本例はC型慢性肝炎の自然史を把握する上で,重要な症例であると考え報告する. |