セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 13:クエン酸タモキシフェン(TAM)による非アルコール性脂肪肝炎(NASH)について |
演者 | 徳永 周子(北里大学 医学部 消化器内科学) |
共同演者 | 渡邊 真彰(北里大学 医学部 消化器内科学), 渋谷 明隆(北里大学 医学部 消化器内科学), 高田 樹一(北里大学 医学部 消化器内科学), 田中 賢明(北里大学 医学部 消化器内科学), 奥脇 裕介(北里大学 医学部 消化器内科学), 日高 央(北里大学 医学部 消化器内科学), 中澤 貴秀(北里大学 医学部 消化器内科学), 西元寺 克禮(北里大学 医学部 消化器内科学) |
抄録 | TAM服用中に肝障害を認め、病理組織学的にNASHと診断した2症例を報告し、乳癌とNASHの診療のあり方について考察する。【症例】症例1は39歳女性。BMI28.7。2006年10月に乳癌切除を受け、同年12月よりTAM 20mg/日を服用開始した。服用開始後3ヶ月以降肝障害が持続していた。症例2は62歳女性。BMI24.8。元来糖尿病に対してインスリン投与中であった。2006年10月に乳癌切除を受け、同年12月よりTAM 20mg/日を服用開始した。服用開始後18ヶ月以降肝障害が持続していた。2例は共に腹部エコーで著明な脂肪肝を認めた。それぞれ2008年8月、2009年2月に肝生検を施行し、Brunt分類で、症例1は grade3、stage1、症例2はgrade2、stage1相当のNASHと診断した。共に乳癌術後の経過は良好であり、症例1はTAM休薬、症例2は代替薬への変更が可能であった。【結論】乳癌は年間発見者数が4万人にのぼり社会的関心が高まっている。一方NASHもメタボリックシンドロームとの関連が強く、放置すれば肝硬変に進展しうる病態として注目されている。しかし薬物起因性NASHについてはあまり知られていない。抗エストロゲン製剤TAMは乳癌に対するホルモン療法の中心的薬剤であると共に、NASHを誘発することが証明されている数少ない薬物の1つでもある。TAM投与中の乳癌患者が肝障害、特に脂肪肝を来たした場合は、NASHの合併を疑う必要がある。進行した薬物起因性NASHは、起因薬中止の検討を要するが、乳癌の予後に影響しうるTAMの中止には慎重を要する。肝生検は、NASHの診断はもとより、肝組織障害の程度を把握しTAM継続の可否を判断する上で重要である。今後乳癌の増加とともにTAM起因性NASHも増加する可能性があり、消化器病専門医、乳癌専門医双方の啓発と連携が必要である。 |
索引用語 | 薬物起因性NASH, タモキシフェン |