セッション情報 一般演題

タイトル 103:

術前に骨盤内腫瘍と診断された小腸間膜発生のGISTの1例

演者 水田 憲利(自治医科大学附属 さいたま医療センター 一般・消化器外科)
共同演者 高田 理(自治医科大学附属 さいたま医療センター 一般・消化器外科), 秦 諭美(自治医科大学附属 さいたま医療センター 一般・消化器外科), 清崎 浩一(自治医科大学附属 さいたま医療センター 一般・消化器外科), 小西 文雄(自治医科大学附属 さいたま医療センター 一般・消化器外科)
抄録 【症例】77歳、女性。2008年11月頃より左下腹部の違和感あり、CT検査施行。骨盤内に腫瘤性病変を認め、当院婦人科紹介受診。MRIでも骨盤内に造影効果を伴う腫瘤性病変を認めた。腫瘍マーカーは正常値範囲内。上下部消化管内視鏡では所見なし。卵巣癌や子宮肉腫が疑われ、婦人科入院となった。【手術】開腹所見で子宮、卵巣は正常大であり、回腸末端より20cm口側の腸間膜に白色、弾性硬な15cm大の腫瘍を認め、当科コンサルトとなる。腸管への腫瘍浸潤はなく、新生血管を処理しながら腸間膜より剥離。腸管を損傷することなく標本を摘出した。全小腸を観察したが特に異常はなかった。【経過】術後一過性に腸閉塞を発症したが、絶食、補液で軽快し、術後7日目に退院となる。病理標本は重量1070g、長径14cmの充実繊維性腫瘍で、一部液状変性を認めた。HE染色で紡錐型細胞を散見し、Sudan染色でも細胞質が黒く染色される同様の所見を認めた。多型性や壊死は無く、核分裂像は認めなかった(0/20HPF)。免疫染色の結果S100陰性、ASMA陰性、CD34陽性、KIT陰性であった。KIT陰性であるが、CD34陽性で紡錘形細胞を認めることからKIT陰性GISTと診断した。【考察】GISTは胃、小腸、食道、大腸に発生する消化管間葉系腫瘍であるが、本症例の様に腸間膜に発生することは稀(0.5%未満)である。腫瘍径は5cmを超えることが多く、30cmを超える例も報告されている。発生部位は結腸間膜が多い。高リスクに分類されることが多いが、本症例は核分裂像、壊死像を認めないことから低リスクの範疇に入るものと考える。またGISTの確定診断には免疫染色が有用であるが、本症例はKIT陰性であった。KIT陰性GISTは全体の4%程度を占め、本症例の様にCD34陽性で組織学的に紡錘型細胞を認めるならGISTと診断できる。更なる確定診断のためには、c-kit、PDGFRAなどの遺伝子検索が必要と思われる。【結語】腸間膜に発生したKIT陰性のGISTの1例を経験した。
索引用語 腸間膜GIST, Kit陰性