セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 66:エリスロマイシン投与が有効と考えられた糖尿病性胃不全麻痺の1例 |
演者 | 殿塚 亮祐(東京労災病院 消化器内科) |
共同演者 | 西中川 秀太(東京労災病院 消化器内科), 福住 宗久(東京労災病院 消化器内科), 辻 雄一郎(東京労災病院 消化器内科), 大場 信之(東京労災病院 消化器内科), 水口 泰宏(東京労災病院 消化器内科), 児島 辰也(東京労災病院 消化器内科) |
抄録 | 症例は47歳、女性。1年前から多尿、口渇が出現し体重減少を認めたが放置していた。平成20年7月中旬より腹満が出現し腹痛、嘔気もみられるようになったため当科を受診した。受診時の腹部CT検査では胃は多量の液体貯留により著明に拡張していた。血液検査にて血糖401mg/dl、HbA1c12.7%、血中ケトン体2952μmol/Lであり高血糖性ケトーシスと考えられた。絶食、輸液管理下にインスリン持続静注を開始したところ、血糖の改善に伴い腹部症状は消失し第3病日には食事摂取可能となった。上部消化管内視鏡検査で幽門部に器質的疾患はなく、末梢神経伝導速度検査では多発末梢神経障害を認め心電図R-R間隔変動係数は0.95%と自律神経障害を伴っていた。他の消化管運動機能異常を呈する全身疾患の合併はみられなかったことより糖尿病性胃不全麻痺と考えられた。その後、外来にて経過観察中であったが、平成21年1月、再び腹満、嘔吐が出現した。腹部CT検査では胃から十二指腸水平脚にかけて多量の液体貯留による高度の拡張がみられトライツ靱帯より肛門側の腸管は虚脱していた。胃の高度緊満のため上腸間膜動脈により十二指腸水平脚が圧排され上腸間膜動脈性十二指腸閉塞様の病態を惹起したと考えられた。絶食、輸液、消化管運動改善薬に加えてエリスロマイシン投与を行ったところ、腹部症状は改善し食事摂取可能となった。糖尿病性胃不全麻痺は糖尿病性自律神経障害が主たる原因と考えられているが、急性の高血糖自体も胃排出遅延をきたすと報告されている。自験例においても初回入院時には血糖の改善に伴って腹部症状が軽快した。治療には血糖コントロールに加え消化管運動改善薬の投与が行われるがエリスロマイシンはモチリン受容体に作用し胃排出を促進させるため本症に有効であると考えられている。自験例は高度の胃不全麻痺により二次的に上腸間膜動脈性十二指腸閉塞を併発したが、エリスロマイシン投与を含む保存的治療により軽快した。 |
索引用語 | 糖尿病性胃不全麻痺, エリスロマイシン |