セッション情報 一般演題

タイトル 25:

確定診断に至らなかった多発性肝癌の一例

演者 土橋 昭(新松戸中央総合病院 消化器・肝臓科)
共同演者 井家 麻紀子(新松戸中央総合病院 消化器・肝臓科), 外山 靖展(新松戸中央総合病院 消化器・肝臓科), 野村 直人(新松戸中央総合病院 消化器・肝臓科), 島田 紀朋(新松戸中央総合病院 消化器・肝臓科)
抄録 【はじめに】肝原発の悪性腫瘍は,肝細胞癌(HCC)が約90%,胆管細胞癌(CCC)が約5%であり,その他の腫瘍は稀である.今回我々は各種検査で確定診断に至らなかった肝原発の悪性腫瘍を経験した.【症例】38歳男性.160cm,99.0kg(BMI 38.7)と高度肥満である.0歳時に左睾丸悪性腫瘍の手術歴(詳細不明)がある.2007年10月頃より全身倦怠感,食思不振,体重減少を認め,2007年12月19日近医を受診.腹部超音波・CT検査にて肝多発性腫瘤及び門脈左枝の閉塞,脾腫,腹腔内リンパ節腫大を認め, 12月28日当科紹介受診となった.血液生化学検査所見では肝機能障害(AST 58IU/L,ALT 50IU/L,ALP 786IU/L,γ-GTP 191IU/L)及び軽度の炎症所見(CRP 2.36mg/dl)を認め,腫瘍マーカーはAFP 5461ng/ml(L3分画 77.6%)と異常高値であったが,CA19-9,PIVKA-2は軽度の上昇を認めるのみであり,各種肝炎ウイルスマーカーは陰性であった.腹部CT検査では肝両葉に最大径20mmの内部濃染不良な腫瘍が多発し,一部は造影効果を受け,門脈左枝の閉塞,極少量の腹水貯留を認めた.腹部MRI検査でも多発肝腫瘍と同心円状のリング状構造を認めた.上部下部消化管内視鏡検査では特記すべき所見を認めなかった.2008年1月7日入院し,腫瘍生検でadenocarcinomaの病理組織診断を得たが,HCC,CCCは否定的であった.基礎疾患に肝線維症を認めた.またFDG-PET-CT検査では,肝全体にFDGの集積を認める他に異常集積はなく,肝原発の悪性腫瘍と考えられた.各種画像診断及び腫瘍生検で確定診断には至らなかったが,根治的治療は困難と判断し,肝動注化学療法(low-doseFP療法)を開始した.4クール終了時点では腹部CT上腫瘍及び門脈左枝腫瘍栓の縮小傾向とAFP値の低下を認めたが,その後徐々に全身状態が悪化したため,さらなる動注化学療法は施行せず,UFT®の経口投与を行った.しかし腫瘍塞栓が門脈本幹にまで進展したため,肝不全が進行し,2009年5月永眠された.【結語】本症例では肝線維症を認め,何らかの肝疾患が関与していた可能性も否定できなかった.各種検査で確定診断に至らなかった肝原発の悪性腫瘍を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 肝癌, 確定診断