セッション情報 一般演題

タイトル 61:

上部消化管内視鏡の前処置中におこったブスコパンショックの1例

演者 多田 和弘(国立がんセンター 中央病院 内視鏡部)
共同演者 角川 康夫(国立がんセンター 中央病院 内視鏡部), 小田 一郎(国立がんセンター 中央病院 内視鏡部), 後藤田 卓志(国立がんセンター 中央病院 内視鏡部), 荒原 健男(船橋二和病院 外科)
抄録 (背景)ブスコパンは内視鏡検査において、消化管蠕動運動の抑制、胃酸や唾液などの分泌抑制目的で広く一般的に用いられている前処置薬の一つである。今回、上部消化管内視鏡検査(EGD)の前処置としてブスコパンを投与され、アナフィラキシーショックと思われる症状を呈した症例を経験したので報告する。(症例)50代、男性(主訴)胃癌ESD後フォロー(現病歴)一年前に早期胃癌を指摘され、ESDが施行されている。治療時を含め、過去に10回のEGDを受けているが前処置にかかわる問題は特にみられていなかった。今回、術後フォロー目的で受診した。問診聴取時には異常なく、前処置としてブスコパン20mgを左三角筋に筋肉注射した。引き続き検査台へ移動するように指示をしたがトイレに行きたいと申し出があったため、許可をした。1~2分後、トイレ退室後に同患者がソファーにて仰向けに横たわり、顔の熱感、悪心を訴えていたところを発見。嘔吐反射がひどく、問いかけに対しても十分に返答できない状態であった。呼吸は急速に努力様となり、意識レベルが低下したため救急処置室に搬送した。到着時、JCS300、脈はモニター上、洞調律で確認できるものの血圧は測定できず、喘ぎ呼吸で、眼瞼は腫脹し瞳孔は散大していた。気管挿管、心臓マッサージなど蘇生術およびアナフィラキシーショックに対するボスミン投与が施され、心拍は再開したものの意識は戻らなかった。(考察)蘇生後の検査ではショックの原因と考えられる明らかな器質的異常はみられず、発症前に投与された薬剤はブスコパンのみであり、経過、症状からブスコパンによるアナフィラキシーショックと判断した。ブスコパンショックは極めてまれであるが、発症時には迅速な治療が必要であり、対応を誤れば致命的な疾患である。その発症頻度とEGDにおけるブスコパンの必要性(有効性)を考慮すると全例に投与を控える必要はないと考えるが、万が一、アナフィラキシーが生じた場合には速やかに対応できるように、投与に際してはその可能性を常に念頭におく必要がある。文献的考察を加えて報告する。
索引用語 ブスコパン, ショック