セッション情報 一般演題

タイトル 20:

自然退縮を認めた肝細胞癌、肺、リンパ節、腹膜転移の1例

演者 森実 千種(国立がんセンター中央病院 肝胆膵内科)
共同演者 奥坂 拓志(国立がんセンター中央病院 肝胆膵内科), 上野 秀樹(国立がんセンター中央病院 肝胆膵内科), 近藤 俊輔(国立がんセンター中央病院 肝胆膵内科), 尾島  英知(国立がんセンター中央病院 病理診断)
抄録 今回我々は遠隔転移を有する肝細胞癌の自然退縮を経験したので報告する。63歳の男性。幼少時に門脈圧亢進症で脾臓摘出された(手術時輸血施行)。その後16歳時に食道静脈バイパス手術、37歳時に食道離断術を施行された。49歳時にC型肝炎を指摘、今回近医でフォロー中に肝腫瘍を指摘。前医(大学病院)で画像所見から肝細胞癌、多発肺転移と診断された。肝腫瘍指摘から約1ヶ月後に当院初診。初診時当院CTでも造影効果のある肝細胞癌と診断。肝病変はS1に6.3cm、S3に5cm、その他、約1cmまでの肺転移、リンパ節転移、腹膜転移が多発していた。CT撮影時より3週間後にS3病変よりエコーガイド下肝腫瘍生検を施行するも大部分が線維組織で悪性細胞指摘できず。その9日後にCTガイド下肝腫瘍生検を行うも同様の結果。造影CTで再検したところ(肝腫瘍指摘から約2か月後、当院初診時CTから約1か月後)、肝病変はS1が4.5cm、S3が2.7cmと縮小、造影効果は消失し生存腫瘍はほとんどないものと推測された。肺転移も消失していたが、リンパ節転移、腹膜転移は大きな変化なし。腫瘍マーカーは(1)肝腫瘍指摘直後(2)当院初診時(3)1度目の生検直前(4)2度目の生検後に測定されており、それぞれαFP(1)測定限界以上→(2)1499→(3)90.8→(4)26.7、PIVKA-2 (1)17000→(2)5374→(3)56→(4)36と推移。現在外来で無治療経過観察中である。本症例は組織学的証明には至らなかったものの、画像所見、腫瘍マーカーからは肝細胞癌の病態を極めて強く疑う病状で、生検時にはすでに自然退縮が進行していたため腫瘍細胞が得られなかったものと考えられた。癌に対する治療が全くなされていない状況で自然退縮を認めた、極めてまれな症例であるため報告した。
索引用語 肝細胞癌, 自然退縮