共同演者 |
鈴木 香峰理(東京都立広尾病院 消化器内科), 関野 雄典(東京都立広尾病院 消化器内科), 秋本 恵子(東京都立広尾病院 消化器内科), 高畑 彩子(東京都立広尾病院 消化器内科), 藤澤 信隆(東京都立広尾病院 消化器内科), 齋藤 久美子(東京都立広尾病院 消化器内科), 小山 茂(東京都立広尾病院 消化器内科), 中島 淳(横浜市立大学消化器内科) |
抄録 |
【症例】74歳男性【既往歴】20代 結核, 50代 高血圧, 60歳 大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症(NYHA2度), 73歳 発作性心房細動【現病歴】2006年10月食欲不振,体重減少の精査で施行した腹部CTで肝右葉後区域に早期相で濃染され,平衡相でwash outされる15cm大の腫瘤性病変を認め,肝細胞癌(HBs抗原陰性,HCV抗体陰性,アルコール多飲歴なし)と診断された.2006年11月肝後区域切除術を施行した(病理:St-P, 12cm, hepatocellular carcinoma(moderately>poorly), Eg, Fc(+), Fc-Inf(+), Sf(+), S0, Vp0, Vv1, Va0, IM0, SM(-), NL).2007年3月残肝再発を認め,その後計4回の肝動脈塞栓術および肝動注療法を行うも肝腫瘍は増大傾向であり,さらに経過中に肺転移も出現した.2008年2月肝動注ポート留置目的に入院となった.【現症】胸部:第3肋間胸骨左縁にLevine3/6の拡張期雑音を聴取 腹部:上腹部に腫大した肝を3横指触知,右季肋に圧痛あり 四肢:下腿の浮腫なし【経過】入院後,動注ポートを造設し化学療法開始予定であったが,2008年3月下旬より息切れと胸部不快感が出現し,徐々に増悪した.心臓超音波検査で右心室内腔をほぼ占拠する11×4cmの腫瘍性病変を認めた. CT,MRI,Gaシンチグラフィ所見より肝細胞癌右心室内転移による心不全症状と判断した.CTでは下大静脈および右房に明らかな腫瘍は認めなかったことより右室内への孤立性転移と考えられた.肝動注療法は不適と判断し,全身化学療法および心不全治療を行ったが,原発および右室内腫瘍の縮小は得られず,2008年5月死亡した.病理解剖の承諾は得られなかった.【結語】肝細胞癌は心臓への転移頻度が低い悪性腫瘍である.今回組織学的検索には至らなかったが,臨床経過と画像検査より肝細胞癌心室内孤立性転移と考えられる貴重な1例を経験した.文献的考察を含め報告する. |