セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 101:膀胱瘻を合併した虫垂粘液嚢胞腺腫の1例 |
演者 | 島田 綾(横浜市立市民病院 外科) |
共同演者 | 小金井 一隆(横浜市立市民病院 外科), 門倉 俊明(横浜市立市民病院 外科), 二木 了(横浜市立市民病院 外科), 杉田 明(横浜市立市民病院 外科), 鬼頭 文彦(横浜市立市民病院 外科), 諸星 雄一(消化器内科), 林 宏行(病理検査部) |
抄録 | 症例は46歳男性で2008年10月から38℃台の発熱と尿道痛、膿尿が出現した.受診した近医の膀胱鏡で消化管との交通が疑われ、下部内視鏡を施行し,虫垂根部周囲の隆起と白濁した粘液の流出を認め精査目的で当院泌尿器科に受診した.膀胱造影では瘻孔を指摘できなかったが、CTで虫垂の腫大を認め,虫垂膀胱瘻疑いで当科受診した.MRIで虫垂内に液体貯留を認めた.CEA 2.6 ,CA19-9 2.7と腫瘍マーカーは正常であった.虫垂粘液嚢胞腺腫,膀胱瘻の疑いで手術となった.経過:術中、虫垂は長さ70mm,幅25mmと腫大していた.虫垂は白色で表面平滑, 弾性硬であった.周囲に10ml程度のゼリー状物質の貯留を認め可及的に除去した.虫垂と膀胱は接していたが,癒着は軽度であった.回盲部切除術(D1郭清)を施行した.直腸Rs部とS状結腸間膜,膀胱が1ヶ所で線維性に癒着していたが瘻孔形成は明らかでなかった.病理組織学的には虫垂先端側に全周性に幅30mmで異型上皮の増生を認めた.異型上皮は低乳頭状構築を示す円柱形細胞よりなり, 異型は軽度で播種病変や壁内への浸潤像は認めず粘液嚢胞腺腫と診断した.術後経過は良好で術後12日目に退院した.考察:虫垂粘液嚢胞腺腫は比較的稀な疾患であり,本邦での頻度は虫垂切除例の0.08~4.1%との報告がある.合併症としては虫垂軸捻転・腸重積・尿管圧迫・癒着性イレウス・腹膜偽粘液腫などがあるが、本例の様に瘻孔を形成した例は稀である.治療としては早期の外科手術が推奨されている.これは、粘液嚢胞腺癌との鑑別が非常に困難であり、また破裂により腹膜偽粘液腫へと進展するためである.術式としては粘液嚢胞腺腫の場合には虫垂切除,粘液嚢胞腺癌の場合にはリンパ節郭清を伴う回盲部分切除もしくは結腸右半切除術が必要である.粘液嚢胞腺腫と腺癌との区別はしばしば困難であり、本例のように早期の手術が望まれる. |
索引用語 | 虫垂粘液嚢胞腺腫, 膀胱瘻 |