セッション情報 一般演題

タイトル 24:

右側肝円索症例における系統性に関する検討(術中染色を施行した一症例)

演者 宮田 明典(東京大学 医学部 肝胆膵外科)
共同演者 進藤 潤一(東京大学 医学部 肝胆膵外科), 脊山 泰治(東京大学 医学部 肝胆膵外科), 青木 琢(東京大学 医学部 肝胆膵外科), 長谷川 潔(東京大学 医学部 肝胆膵外科), 別宮 好文(東京大学 医学部 肝胆膵外科), 菅原 寧彦(東京大学 医学部 肝胆膵外科), 國土 典宏(東京大学 医学部 肝胆膵外科)
抄録 【目的】 右側肝円索症例では肝円索が門脈前区域枝本幹に付着しており、前区域本幹が門脈臍部と認識されるため脈管の支配領域も通常解剖の症例とは異なる。今回我々は術中染色により右側肝円索症例における前区域の系統性を示唆する症例を経験したので報告する。【症例】症例は58歳、男性。B型肝硬変に合併した肝外突出型の肝細胞癌に対し肝S2、S6部分切除術を施行。この際に右側肝円索を指摘された。術後1年の時点でEOBによる造影MRIにて肝S8門脈臍部の右側にhepatobiliary phaseで造影剤の取り込み低下を示す1cm大の腫瘤が認められ、軽度の早期濃染を伴うことから肝細胞癌再発と診断。ICG R15は18%であり再肝切除の方針となった。【結果】腫瘍は門脈臍部から右側へ分枝する門脈枝(P8)の灌流域に存在し、そのすぐ背側を後区域門脈から分枝し胆嚢床右側へ向かう門脈枝が走行していた。それぞれをエコーガイド下に穿刺し、インジゴカルミンにて染色したところ、前者の染色域は前区域横隔膜面肝表に出現した。また後者については染色域が胆嚢右側の臓側面肝表に現れ、S5に相当するものと考えた。これら染色域を参考に腫瘍から十分なマージンをとり部分切除を施行した。染色領域は肝シミュレーションソフトを用いた支配領域と一致した。病理所見は高分化型肝細胞癌であった。【考察】右側肝円索は肝内脈管の分岐異常を伴うことが多く、特に肝予備能低下例や再肝切除症例では術前に脈管構造を立体的に把握した上での術式のプランニングが重要である。エコー、CT、MRIなどの画像診断を駆使した肝内脈管の分岐形態の把握とともに、肝シミュレーションソフトを用いた支配領域予測や術中染色による門脈灌流域の確認はこうした症例においても有用と考えられる。【結語】右側肝円索症例において前区域の脈管支配は通常と異なるため支配領域の確認に術中染色が有用であった。
索引用語 右側肝円索, 肝細胞癌