セッション情報 一般演題

タイトル

腸間膜に発生した炎症性筋線維芽細胞性腫瘍の一切除例

演者 小林 慎一朗(国立病院機構 長崎医療センター 外科)
共同演者 永田 康浩(国立病院機構 長崎医療センター 外科), 渡海 大隆(国立病院機構 長崎医療センター 外科), 和田 桃子(国立病院機構 長崎医療センター 外科), 田渕 聡(国立病院機構 長崎医療センター 外科), 田中 史朗(国立病院機構 長崎医療センター 外科), 中田 哲夫(国立病院機構 長崎医療センター 外科), 遠山 啓亮(国立病院機構 長崎医療センター 外科), 原口 正史(国立病院機構 長崎医療センター 外科), 蒲原 行雄(国立病院機構 長崎医療センター 外科), 前田 茂人(国立病院機構 長崎医療センター 外科), 辻 博治(国立病院機構 長崎医療センター 外科), 藤岡 ひかる(国立病院機構 長崎医療センター 外科), 伊東 正博(国立病院機構 長崎医療センター 臨床検査科)
抄録 【はじめに】腸間膜炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor)は、組織学的に筋線維芽細胞の特徴を示す紡錘形細胞の増殖と,リンパ球や形質細胞などの炎症細胞浸潤が混在する、稀な腫瘍である。【症例】70歳代、男性。腹部不快感で近医受診。腹腔内腫瘤を指摘され当科紹介となった。下腹部に軽度の圧痛と抵抗を認める以外、理学的所見に異常なく、血液生化学検査でも異常を認めなかった。腹部CTでは、上腸間膜根部に淡い造影効果と一部石灰化を伴う4cm大の腫瘤性病変を認め、周囲脂肪織濃度上昇と血管の巻き込み像を認めた。周囲リンパ節腫大を認めた。FDG-PETでは、同部に高集積および遅延像で集積亢進を認める悪性パターンであった。遠隔転移は認めなかった。小腸腸間膜由来の悪性リンパ腫やデスモイドなどを疑い、開腹した。腫瘍はトライツ靭帯から肛門側2mの小腸腸間膜に存在し、腫瘍切除および小腸部分切除術を行った。病理組織学的検査では、腫瘍は硝子化を伴う線維化を主体とし、斑状の好中球・組織球・リンパ球などの炎症細胞浸潤を認めた。また、線維芽細胞様の紡錘形細胞と介在する膠原線維が渦巻き状の配列を呈していた。増生する紡錘形細胞には異型は乏しく核分裂像もまれであった。免疫組織学的検査所見では、紡錘形細胞はαSMA陽性Desmin陰性S-100陰性CD21陰性であった。In situ hybridization 法ではEBV-RNAの発現は認められなかった。結核菌や非定型好酸菌も認めなかった。以上より腸間膜炎症性筋線維芽細胞性腫瘍と診断した。術後3ヶ月経過し再発を認めていない。【考察】炎症性筋線維芽細胞性腫瘍は筋線維芽細胞の特徴を示す紡錘形細胞の増殖から成り,主にリンパ球や形質細胞などの炎症細胞浸潤の著明な腫瘍であると定義されている。腸間膜の炎症性筋線維芽細胞性腫瘍は検索し得た範囲で本邦では9例しか報告されておらず稀な症例と考えられた。画像所見・治療方針・予後に関して文献的考察を加えて報告する。
索引用語 腸間膜炎症性筋線維芽細胞性腫瘍, FDG-PET