セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 虚血性腸炎によって生じたS状結腸の狭窄が自然経過観察にて改善した一例 |
演者 | 井上 龍二(串間市民病院 内科) |
共同演者 | 牧野 智礼(串間市民病院 内科), 岩屋 博道(串間市民病院 内科), 中西 千尋(串間市民病院 内科), 長沼 志興(串間市民病院 外科), 新名 一郎(串間市民病院 外科), 中澤 潤一(鹿児島大学 消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大学 消化器疾患・生活習慣病学) |
抄録 | 【症例】75歳の男性で,当院にて心房細動,高血圧,糖尿病にて通院加療中。平成18年2月27日より新鮮血下血が出現,持続したため,翌28日に受診した。同日入院の上、S状結腸付近までの緊急内視鏡検査を施行した。上部直腸よりS状結腸にかけて,発赤や壊死によると思われる縦走する黒色調の病変を認めた。臨床経過や内視鏡所見より虚血性腸炎が第一に考えられ,生検組織の病理学所見も虚血性腸炎に矛盾しないものであった。腹痛は比較的軽度で腹膜刺激症状なく、腹部単純レントゲンや腹部CT検査でもイレウス像、遊離ガス像,腹水等は認めず、絶食、末梢補液、抗生剤投与にて保存的加療を行った。3月7日の全大腸内視鏡検査では,肛門縁より35cm付近に縦走する潰瘍性病変を認め、介在する粘膜面も粗造で易出血性であった。その後も臨床症状の増悪なく,同13日より経口摂取を開始した。同27日の内視鏡検査では,潰瘍性病変は治癒傾向にあったが,周囲粘膜はまだ易出血性であり,肛門縁から25cmと35cm付近には腸管内腔の狭小化を認め,後者では内視鏡体が通過出来なかった。翌日の注腸造影検査では,同狭窄部2箇所ともガストログラフィンは問題なく通過した。腹部症状がなく,排便もあり,患者本人も保存的加療を希望されたため,食事内容に留意し,排便コントロールを十分に行いながら外来で慎重に経過観察する方針となった。以後も腹部症状、排便異常、下血等は認めなかった。本人の了解あり、平成20年10月27日に施行した全大腸内視鏡検査では,肛門縁より15cmから35cm付近にかけて潰瘍瘢痕と思われる粘膜面のひきつれや褪色域が認められたが、狭窄は改善しており、内視鏡体は問題なく通過できた。【結語】狭窄型虚血性腸炎では,バルーン拡張術や手術による加療を必要とした報告例も認められる。しかし,本例では急性期に認めたS状結腸の強い狭窄が経過観察にて改善しており,イレウス徴候等を来していない場合,急性期に狭窄を認めた症例の治療方針は慎重に決定する必要があると考えられた。 |
索引用語 | 虚血性腸炎, S状結腸狭窄 |