セッション情報 一般演題

タイトル

化学療法が奏効しCRを得た、門脈内腫瘍栓を伴う進行・再発肝細胞癌の2症例

演者 林 洋(国立病院機構 別府医療センター 外科)
共同演者 池田 陽一(国立病院機構 別府医療センター 外科), 山下 晋作(国立病院機構 別府医療センター 内科), 矢田 一宏(国立病院機構 別府医療センター 外科), 鶴田 悟(国立病院機構 別府医療センター 内科), 松本 敏文(国立病院機構 別府医療センター 外科), 酒井 浩徳(国立病院機構 別府医療センター 内科)
抄録 【目的】一般に進行・再発肝細胞癌は化学療法の効果が芳しくなく、特に門脈内腫瘍栓を伴う場合 肝不全の進行等で全身状態の悪化を招き易く治療には難渋する。今回我々は、抗癌剤治療(動注、経口)が奏効しCRを得た2症例を経験したので報告する。【症例1】74才男性。肝硬変(C型)がありICG15 29.7%、肝障害度B。Vp2の門脈内腫瘍栓を伴う後区域の塊状型肝細胞癌に対し、動注治療(Chemo-lipiodolization:エピルビシン併用 2回、及びMonthly CDDP 100mg/body持続動注 14回)を施行。CDDP投与開始後より腫瘍マーカーの低下を来し、2ヶ月後のCT、血管造影にて腫瘍の退縮と腫瘍栓の縮小を認めた。持続動注を計14回施行するうちに病巣は器質化したと見られCRと判定した。現在化学療法の施行なく腫瘍の再燃無し。治療開始より3年生存中である。【症例2】82才男性。糖尿病あり。肝炎ウィルス感染なくICG15 14.8%、肝障害度A。中分化肝細胞癌に対し2回の手術を施行。再手術後1年6ヶ月で肝内多発再発を認めた。動注治療(Chemo-lipiodolization、Monthly CDDP 120mg/body持続動注)を施行するも無効でVp3の門脈内腫瘍栓も出現した。外来でUFT-E 300mg/日を投与開始後1ヶ月で腫瘍マーカーは急速に正常化し肝障害も改善し、2ヶ月で腫瘍、門脈腫瘍栓は消失した。【結論】門脈内腫瘍栓の治療は困難な例が多くそのコントロールに難渋する事も多い。門脈内腫瘍栓を伴う進行肝細胞癌に対する、動注治療の効果は40%台と報告されているが、症例1の様に腫瘍栓の消失まで得られ、CRとなる事は困難である。一方、経口抗癌剤の再発肝細胞癌に対する効果は2%内外と報告されているが、症例2の様に劇的な効果を得る例も散見される。門脈内腫瘍栓併発例でも、患者の状態が比較的良好で治療に対する受容性があり、肝機能を含めた全身状態、QOLが維持出来れば積極的な治療を検討すべきである。
索引用語 肝細胞癌, 門脈内腫瘍栓