セッション情報 一般演題

タイトル

診断に苦慮した蟯虫症の一例

演者 福間 五龍(医療法人社団高邦会高木病院 消化器科)
共同演者 知念 正明(医療法人社団高邦会高木病院 消化器科), 阿座上 聖史(医療法人社団高邦会高木病院 消化器科), 森田 秀祐(医療法人社団高邦会高木病院 消化器科), 西田 宏二(医療法人社団高邦会高木病院 消化器科)
抄録 【はじめに】微熱、腹痛、炎症反応陽性の精査ため大腸内視鏡検査を施行し、蟯虫症と確定した症例を経験したので報告する。
【症例】17歳男性。てんかんにて内服治療中。2007年3月上旬右下腹部痛が出現し、当院を受診した。下痢・便秘・血便等はなく普通便であった。肛門周囲の掻痒感の訴えはなかった。初診時現症では、身長167cm、体重65kg、体温37.3℃、眼球結膜に貧血、黄疸なし、表在リンパ節触知せず、腹部は軟で平坦、右下腹部に圧痛を認めた。腸蠕動は正常で反跳痛・筋性防御は認めなかった。初診時血液生化学検査ではWBC 7160/μL、CRP 0.96mg/dL、Hgb 11.9g/dL、Fe 27μg/dLと軽度の炎症と鉄欠乏性貧血を認めた。当初対症療法をしていたが、その後も微熱、腹痛を繰り返し、3か月後の再診時には4kgの体重減少を認めた。6月中旬腹部CT検査にて、多発する腸間膜内の軽度リンパ節腫大を認めた。クローン病を疑い小腸造影検査を施行したが異常は認められなかった。小腸造影検査翌日より右下腹部痛が増強し、38℃の発熱が出現した。再度行った腹部超音波検査、腹部CT検査の結果、急性虫垂炎と診断し虫垂切除術を施行した。虫垂の病理組織は急性化膿性虫垂炎の所見であった。術後症状は一旦軽快していたが、時に下腹部痛、微熱を来したため、2007年12月下旬大腸内視鏡検査を施行した。大腸内視鏡検査にて長径約1cmの虫体を多数認め、虫体検査にて蟯虫症と確定した。コンバントリン内服にて駆虫し、以後自他覚症状共に消失した。
【結語】経過中一度も肛門周囲の掻痒感を訴えなかったため、診断に苦慮した。蟯虫症はいまだ頻度の高い寄生虫症であり、鑑別疾患として重要である。
索引用語 腹痛症, 寄生虫