共同演者 |
宇都宮 徹(広島赤十字・原爆病院 外科), 山下 洋市(広島赤十字・原爆病院 外科), 太田 光彦(広島赤十字・原爆病院 外科), 田川 哲三(広島赤十字・原爆病院 外科), 松山 歩(広島赤十字・原爆病院 外科), 岡崎 仁(広島赤十字・原爆病院 外科), 山本 学(広島赤十字・原爆病院 外科), 筒井 信一(広島赤十字・原爆病院 外科), 石田 照佳(広島赤十字・原爆病院 外科) |
抄録 |
【症例】63歳、男性【現病歴】2年間、胸部陰影で経過観察中。2009年1月のCTで膵頭部腫瘤を指摘された。胸部陰影は精査にて炎症性腫瘤との診断。【既往歴】気管支喘息、高血圧、うつ病。【画像診断】《上下部消化管内視鏡》異常所見なし。《CT》膵頭部頭側に34x33mmの分葉状腫瘤あり。単純CTにて軽度高濃度。造影CTでは大部分が均一に軽度濃染される。門脈本幹、上腸間膜動脈から分岐した右肝動脈と接し、背側に圧排。固有肝動脈を左側に圧排し、総胆管とも接する。主膵管、肝外胆管に拡張なし。《PET-CT》腫瘍にSUV 5.1-5.3の集積。《EUS》膵頭部に接して38mm大の低エコー腫瘤。膵実質に接している部分は一部境界不明瞭。EUS下に穿刺吸引組織診施行。【病理診断】spindle cellより成る腫瘍。c-kit (-), CD34(-), S-100 (-), α smooth muscle actin (+), CAM5.2(-), MIB-1:10%以上で陽性。GISTあるいはleiomyosarcomaが疑われた。【手術】上記により、腫瘍核出術、あるいは膵頭十二指腸切除を予定し、手術を行った。開腹所見では、腫瘍は肝十二指腸靭帯内の膵頭側に認められ、膵実質への浸潤は無かった。十二指腸を授動した後に総肝動脈、胃十二指腸動脈、固有肝動脈、右肝動脈にそれぞれテーピングを行った。門脈腹側に4cmの白色調腫瘍を認めた。門脈とは約2cmにわたり接しており、肉眼的に門脈壁原発の腫瘍と考えられた。腫瘍の上下で門脈を全周性に剥離し、テーピングを行った。門脈本幹を約3cm合併切除し腫瘍を摘出した。リンパ節廓清は#8, 9, 12, 13aまで行った。再建は5-0ネスピレンにて連続縫合で行った。【結語】血管原発平滑筋肉腫はその75%が下大静脈に発生する。門脈系に認められることは非常に稀であり、これまで5例の英文報告を認めるのみである。2例が門脈に、3例が上腸間膜静脈に認められた。平均年齢は44歳(28-62)。腫瘍径は7.5cm(4-13)。症状は食欲不振、腹痛、腹満など特異的なものはない。治療法は、外科的切除が第一選択であり、化学療法、放射線療法の有効性は定かではない。今回我々は、門脈原発が示唆された平滑筋肉腫を経験した。膵頭部付近の平滑筋肉腫を認めた場合、門脈再建を要する本疾患を考慮する必要があると考えられた。 |