セッション情報 研修医発表

タイトル

大腸全摘後に小腸病変が出現した潰瘍性大腸炎の一例

演者 服部 彩子(佐賀大学医学部消化器内科)
共同演者 冨永 直之(佐賀大学医学部消化器内科), 鶴岡 ななえ(佐賀大学医学部消化器内科), 萬年 孝太郎(佐賀大学医学部消化器内科), 坂田 資尚(佐賀大学医学部消化器内科), 下田 良(佐賀大学医学部消化器内科), 綱田 誠司(佐賀大学医学部消化器内科), 坂田 祐之(佐賀大学医学部消化器内科), 岩切 龍一(佐賀大学医学部消化器内科), 藤本 一眞(佐賀大学医学部消化器内科)
抄録 症例は60歳男性。1991年に潰瘍性大腸炎(UC)と診断され、当院外来にて経過観察中。寛解導入困難症例であり、5-ASA、ステロイド、アザチオプリン内服、白血球除去療法(LCAP)など使用されるも自覚症状の改善に乏しく、2008年12月3日に腹腔鏡下大腸全摘、回腸嚢肛門管吻合術を施行された。術後、麻痺性イレウス・癒着性イレウス・小腸出血が出現し12月30日に緊急開腹手術施行。この時小腸内に多発びらんが存在し、その一部より活動性の出血が認められ、外科的に止血施行された。その後は順調に経過していたが、食思不振、嘔気・嘔吐が持続し、精査・加療目的に2009年2月17日当科転科となった。上部消化管内視鏡検査を施行したところ、術中に認められたような小びらんが十二指腸内にびまん性に散見された。カプセル内視鏡、小腸内視鏡検査でも同様の所見が小腸内にびまん性に認められ、特に下部空腸には目立って認められた。同部の生検結果より、炎症細胞浸潤や陰窩膿瘍が認められ、臨床経過からも術後に出現した潰瘍性大腸炎の小腸病変と判断した。5-ASAの粉末状投与にて症状の軽快が得られたため、退院とし、外来経過観察とした。本邦では潰瘍性大腸炎に伴う小腸病変の報告がいくつかあり、そのほとんどが全大腸炎型である。半数以上は全大腸摘出後に出現しており、本症例のように左半結腸型の全大腸摘出後に出現した症例は稀である。治療は5-ASA単独投与からステロイド療法、LCAPまで様々な報告があるが、症例数が少なく確立された治療法がないのが現状である。大腸全摘後に小腸病変が出現した潰瘍性大腸炎を経験したため、若干の文献的考察を加え、ここに報告する。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 小腸病変