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75歳以上の高齢者におけるアスピリン、NSAID消化管傷害の現況と対策

演者 末廣 剛敏(新中間病院 外科)
共同演者 矢毛石 陽一(新中間病院 外科), 實藤 健作(新中間病院 外科), 境 文孝(新中間病院 内科), 豊川 毅(新中間病院 内科), 潮下 敬(新中間病院 内科), 石村 啓司(新中間病院 整形外科), 杉江 由美(新中間病院 内科), 奥平 恭之(新中間病院 外科), 狩野 律(新中間病院 外科), 嶺 博之(新中間病院 外科), 松崎 浩一(新中間通谷クリニック)
抄録 【はじめに】高齢者社会が進むにつれ低容量アスピリン製剤やNSAIDS投与症例が増えその副作用が問題となっている。当院は周囲に多くの老健施設や老人ホームが点在する一般100床療養型50床の中規模病院である。当院における75歳以上の高齢者におけるアスピリン、NSAID消化管傷害の現況と対策について報告する。【対象】2007~2008年の2年間の胃内視鏡検査1793例を対象とした。内視鏡所見は潰瘍、びらん、胃炎、所見なしの4段階とし、潰瘍とびらんを胃粘膜傷害ありとした。抗血小板薬・抗凝固薬およびNSAIDS内服状況とPPI、H2ブロッカー内服の有無の関連および内視鏡所見を75歳以上の長寿群683例と74歳以下の対照群1106例とで比較検討した【結果】抗血小板薬もしくはNDSIDS内服症例は長寿群283例(41.2%)対照群211例(19.1%)と長寿群で有意に多かった。内訳では低容量アスピリンが長寿群183例(26.8%)対照群100例(9.0%),その他の抗血小板薬が長寿群58例(8.5%)対照群63例(5.7%),NSAIDが長寿群52例(7.6%)対照群54例(4.9%),COX2阻害薬が長寿群36例(5.3%)対照群16例(1.4%)であり、長寿群における低容量アスピリン内服が特に多かった。一方、胃粘膜傷害は長寿群165例(24.2%)対照群285例(25.8%)と差は見られなかった。抗潰瘍薬内服症例は長寿群340例(49.8%)対照群342例(30.9%)と長寿群で多く、特にPPI内服症例が長寿群212例(31.0%)対照群181例(16.4%)と長寿群に有意に多かった。また、長寿群対照群ともに低容量アスピリン製剤よりNSAIDSのほうが胃粘膜傷害を増強させやすいが、低容量アスピリンよりその他の抗血小板薬にて胃粘膜傷害が軽減され、NSAIDSよりCOX2阻害薬にて胃粘膜傷害が増強され、それぞれの胃粘膜傷害はH2ブロッカーよりもPPIでより軽減された。【結論】抗血小板薬、NSAIDSの内服率は長寿群で有意に高いものの胃粘膜傷害率には差がなかった。これは抗潰瘍薬特にPPIの内服率が長寿群で有意に高いためと考えられた。また、低容量アスピリンよりその他の抗血小板薬で胃粘膜傷害が少なく、低容量アスピリンを他の抗血小板薬に変更するのも有効である可能性が示唆された。
索引用語 NSAID, 低容量アスピリン