セッション情報 要望演題10 「門脈圧亢進症治療の新たな展開」

タイトル

孤立性胃静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法の有効性と安全性についての検討

演者 柏原 由美(飯塚病院 消化器内科)
共同演者 久保川 賢(飯塚病院 消化器内科), 赤星 和也(飯塚病院 消化器内科)
抄録 【目的】孤立性胃静脈瘤に対する治療として,バルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)が普及してきているが,胃腎シャントを有しない場合には不可能なこともある.当院では孤立性胃静脈瘤に対しCyanoacrylate(CA)および5% Ethanolamine oleate(EO)の併用による内視鏡的硬化療法を第一選択としている.今回孤立性胃静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法の臨床的有用性につき検討を行った.【方法】対象は2004年10月より2008年9月まで当科にて予防的ないし待機的に内視鏡的硬化療法を行った孤立性胃静脈瘤症例30例.男性20例,女性12例,平均年齢は69歳(51歳~86歳).成因は,ウィルス性肝炎17例(HCV16例),アルコール性9例,PBC1例,胆管細胞癌2例,大腸癌肝転移1例.肝機能はChild-Pugh分類A 10例,B 15例,C 5例.肝癌合併例は8例であった.静脈瘤内視鏡所見はLg-cf 25例,Lg-f 5例,F2 20例,F3 10例.治療時期は,待機例14例,予防例16例であった.治療前にEUSおよびCTにて血行動態の評価を行い,小原らの提唱するCA/EO併用法による内視鏡的硬化療法を行った.内視鏡的硬化療法の治療成績,合併症及び予後につきretrospectiveに検討した.【成績】緊急止血も含めた平均治療回数は2.6回.平均CA使用量は3.6ml,EO使用量は14.6mlであった.平均観察期間は433日,静脈瘤消失率は90%(26/29)であった.観察期間中の再発例は5例(17%)で,出血再発例は1例(3%)であった.術後早期合併症は発熱14例(44%),血尿17例(41%),心窩部痛4例(13%),輸血を要する出血1例(3%)であったが,いずれも保存的治療にて軽快した.観察期間中の死亡例は9例(30%)で,死因は肝不全3例,他病死4例,肺炎1例,SBP1例で,静脈瘤関連出血死は認めなかった.また,治療前後に造影ないしMDCTを施行し,血行動態を評価できた17例のうち,16例で治療前にGRSを有しており,その内15例(94%)で治療後にもGRSが残存していた.また,治療後に食道静脈瘤の増悪を認めたものは6例(20%)で,肝予備能の明らかな低下はみられなかった.【結論】孤立性胃静脈瘤に対するCA/EO併用法による内視鏡的硬化療法は安全に施行可能で出血再発も少なく,有用な治療法と考えられた.
索引用語 胃静脈瘤, 内視鏡的硬化療法