セッション情報 一般演題

タイトル

診断に苦慮した大腸アメーバ赤痢の1例

演者 鶴岡 ななえ(佐賀大学 消化器内科)
共同演者 冨永 直之(佐賀大学 消化器内科), 白石 良介(佐賀大学 消化器内科), 萬年 孝太郎(佐賀大学 消化器内科), 坂田 資尚(佐賀大学 消化器内科), 下田 良(佐賀大学 消化器内科), 綱田 誠司(佐賀大学 消化器内科), 坂田 祐之(佐賀大学 消化器内科), 岩切 龍一(佐賀大学 消化器内科), 藤本 一眞(佐賀大学 消化器内科)
抄録 【症例】36歳男性。既婚。7月中旬頃より風邪気味であり、時折1回/日程度の下痢を自覚していたため、市販の風邪薬などを内服していた。9月上旬頃には1日5~6回の水様下痢を認めるようになり近医を受診し、LVFXを処方された。その3日後位より下血を伴うようになったため、別の病院を受診したところAMPCを処方された。しかしその後も症状改善認めず平成20年10月18日大腸内視鏡検査を施行したところ、潰瘍性大腸炎を疑われ5ASA製剤の内服および注腸開始。症状やや軽快したものの持続していることから、精査加療目的に同月28日当院を紹介・入院となった。入院後施行した大腸内視鏡検査にて、回盲部~直腸にかけて発赤・びらんを散見し、特に直腸で発赤・びらん、腸管粘膜の浮腫は著明であった。介在粘膜は正常なため潰瘍性大腸炎は否定的であり、CD toxin陰性であったが、経過や病理検査より偽膜性腸炎を疑って11月7日よりVCM内服を開始した。下痢症状は速やかに改善を認め11月10日退院となったが、入院時施行した血清アメーバ抗体が陽性と判明し、追加の病理学的検索にてアメーバ虫体を確認できたため、外来にて11月13日からメトロニダゾール内服を開始。その後は症状再燃なく、11月27日施行の大腸内視鏡検査上も発赤・びらんは改善し、生検上もアメーバ虫体は確認できなかった。
【考察】大腸アメーバ赤痢は多様な下痢の性状を呈し、寛解と増悪を繰り返す慢性腸炎として知られており、内視鏡所見および病歴、性嗜好等より感染を疑い、確定診断に至ることが多い。今症例では内視鏡的には鑑別として考えられたが、臨床経過において抗生剤内服を契機に症状増悪したようにも見え、また感染経路が不明瞭であったことから診断に苦慮した。
【結語】今回、診断に苦慮した大腸アメーバ赤痢の一例を経験した。本疾患は多彩な内視鏡所見を呈することがあり、他の疾患と鑑別が困難な場合には本疾患も念頭に置き、精査を行う必要があると考えられた。
索引用語 大腸アメーバ赤痢, メトロニダゾール