セッション情報 シンポジウム 「ESDの治療成績向上をめざして」

タイトル

UL合併早期胃癌症例に対するESDの現状および成績:ESD治療成績向上を目指すための当院での工夫

演者 上尾 哲也(大分医療センター)
共同演者 福地 聡士(大分医療センター), 所  征範(大分医療センター), 重松 利行(大分医療センター), 本田 浩一(大分医療センター), 森内  昭(大分医療センター), 穴井 秀明(大分医療センター), 室  豊吉(大分医療センター), 清家 正隆(大分大学医学部付属病院 第一内科), 横山 繁生(大分大学医学部付属病院 第一病理)
抄録 【目的】前回我々はULIIs以深の潰瘍(瘢痕)がESD一括切除を困難にする因子であることを報告した。ESD治療成績向上のためにはUL合併適応拡大病変の適応評価、技術的な克服が重要と考え取り組んでいる。今回、UL合併病変に対する治療成績を中心に検討を行った。【対象と方法】2005年1月~2009年3月にESDを施行した胃上皮性腫瘍94例のうち胃腺腫を除く早期胃癌78例を対象とした。病理検索後にULIIs以深症例の患者背景、切除径、腫瘍径、潰瘍範囲、EUS正診率、UL深度、偶発症と一括完全切除率について検討した。また78症例を前期(2007年12月まで)と後期にわけ、そのULIIs以深病変の割合と治療成績を検討した。【成績】UL合併病変は78例中10例で、ULIIs以深は9例あった。1例が腫瘍深達度SM2の適応外病変であったが、8例は適応拡大病変であった。切除径は63-29(42)mm, 腫瘍径32-3(18)mm、潰瘍範囲4-40(15)mm, EUS正診率が50%であった。UL深度はULIIsが7例、ULIIIs以深が3例であった。偶発症はULIII-IVsかつ広範囲の潰瘍瘢痕1例で穿孔を認めた。一括完全切除は適応外の1例を除いて6/8(75%)であった。ULIIIs以深かつ広範囲の潰瘍瘢痕2例では技術的に一括切除困難で追加手術を必要とした。またULIIIsでも瘢痕範囲が小さな(13mm)1例は一括完全切除可能であった。前期45例と後期32例でULIIs以深例は前期4例と後期5例であったが、うち前期の1例は腫瘍深達度SM2で適応外病変であった。後期のULを伴う病変では1.5mmフラッシュナイフや必要時の2チャンネルスコープ使用、瘢痕部より離れた部からの切開かつ適切な剥離深度を心掛け、できるだけULIIsまでにとどまる病変の適応選択を試みた。その結果、前期の一括完全切除率は適応病変26/30(87%)、適応拡大5/9(56%)、適応外1/6(17%)であったが、後期では適応病変21/21(100%)、適応拡大10/11(91%)、適応外0/0であり、治療成績の向上がみられた。【結語】ULIIs合併病変および狭い範囲でのULIIIs合併病変に対してのESD一括切除は可能であり、これらの症例の見極め、取り組みが治療成績向上につながると考える。
索引用語 潰瘍瘢痕合併病変, ESD