共同演者 |
鉾之原 英(鹿児島市医師会病院 消化器内科), 岡江 耕二郎(鹿児島市医師会病院 消化器内科), 伊東 徹(鹿児島市医師会病院 消化器内科), 中武 信純(鹿児島市医師会病院 消化器内科), 下川原 尚人(鹿児島市医師会病院 消化器内科), 宇都宮 民春(鹿児島市医師会病院 消化器内科), 岩切 裕二(鹿児島市医師会病院 消化器内科), 内園 均(鹿児島市医師会病院 消化器内科), 山口 淳正(鹿児島市医師会病院 消化器内科), 坪内 博仁(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 消化器疾患・生活習慣病学) |
抄録 |
症例は69歳女性. 平成20年10月より腹満自覚し, 前医で腹水貯留を指摘され, 利尿剤内服で治療開始. 11月になりコントロール不良となり, 精査目的で当科紹介入院. 入院時血液検査ではCRP 12.4 mg/dl・CA125:1197 U/mlと上昇を認めた. 腹部エコー検査では腹水が大量に貯留していた. CT検索では両側胸水を認めるものの肺野に異常陰影はなく, 腹膜肥厚・腸間膜や大網の濃度上昇や結節病変も認め, 炎症波及や腹膜播種性病変も疑った. ガリウムシンチで右胸水によると思われる右下肺野の集積があり, 腹腔内も軽度の集積を認め, 腹膜炎を否定できない所見だった. 上下部消化管検索もしたが, 腹水の原因となる所見は認めなかった. 胸水・腹水穿刺を施行し, 共に滲出性でリンパ球優位だった. 細菌培養検査や細胞診では陰性だったが, 胸水中ADA 48.0 IU/L, 腹水中ADA 78.9 IU/Lと上昇していた.確定診断目的に腹腔鏡下腹膜生検を施行したが, 乾酪性肉芽腫はなく確定診断には至らなかった. 但し, 類上皮細胞を伴ったlanghans型巨細胞や壊死性分を含む炎症性肉芽腫であり, 血清クオンティフェロンが陽性だったことから, 結核性腹膜炎を最も疑い, イソニアジド・リファンピシン・塩酸エタンブトール・ピラジナミドの4剤で治療を開始した. 治療開始後は解熱し, 炎症所見や胸・腹水も軽減した. 従来から結核性疾患の確定診断として培養検査・PCR法による結核菌の同定, あるいは生検標本から病理組織学的に乾酪性肉芽腫を証明する必要があると報告されている. 本症例では組織診でも確定診断に至らなかったが, 血清クオンティフェロン陽性であることなどから結核性腹膜炎と考えた. 今回, 若干の文献的考察も含め報告する. |