セッション情報 要望演題9 「B型肝炎治療の長期経過と問題点」

タイトル

B型肝炎関連肝疾患に対する生体肝移植後の肝炎再発予防

演者 池上 徹 (九州大学 消化器総合外科)
共同演者 武冨 紹信(九州大学 消化器総合外科), 副島 雄二(九州大学 消化器総合外科), 吉住 朋晴(九州大学 消化器総合外科), 内山 秀昭(九州大学 消化器総合外科), 二宮 瑞樹(九州大学 消化器総合外科), 森田 和豊(九州大学 消化器総合外科), 戸島 剛男(九州大学 消化器総合外科), 武石 一樹(九州大学 消化器総合外科), 調  憲(九州大学 消化器総合外科), 前原 喜彦(九州大学 消化器総合外科)
抄録 【背景・目的】B型肝炎ウイルス(HBV)関連肝疾患は、生体肝移植の主要な適応疾患であり、HBVによる劇症肝炎、非代償性肝硬変および肝癌、HBc抗体陽性ドナーからの肝移植患者が含まれる。【対象・方法】2009年3月までに当科に於いて生体肝移植を行った315例の内、B型劇症肝炎(n=14)、B型肝硬変(n=24、肝癌n=18)、HBc抗体陽性グラフト移植(n=32)の合計64例を対象とした。それぞれのグラフト生存率、HBV再感染率、HBVワクチンの効果に関する検討を行った。【結果】(1)B型劇症肝炎症例(n=14)のグラフト5年生存率は77.1%であった。12例がLamivudine + HBIGで、2例がEntecavir + HBIGにて抗ウイルス治療を導入、生存例の内2例が経済的理由からLamivudine+HBIGからLamivudine+Adefovirに変更し維持療法を行っている。現在HBV再感染例は認めない。HBVワクチンは4例に施行し、1例にてHBs抗体の産生を認めた。(2)B型肝硬変症例(n=24)のグラフト5年生存率は//であった。9例がLamivudine + HBIG、6例がEntecavir + HBIG、8例のYMDD変異陽性例がLamivudine+ Adefovir+HBIG、HBs抗原陽性ドナーから移植を受けた1例がLamivudine+Adefovirにて抗ウイルス治療を導入した。HBV再発は3例に認め、1例はワクチン施行中に、1例はHBIGに対するコンプライアンス不良から、1例はHBs抗原陽性グラフトの移植によりHBV再発を認めている。ワクチンは1例に施行したがHBs抗体の産生は認めなかった。(3)HBc抗体陽性グラフト移植症例(n=32)のグラフト5年生存率は//であった。24例がLamivudine+HBIG、4例がEntecavir+HBIG、4例がLamivudineにて抗ウイルス治療を導入した。生存例24例の内、10例がLamivudineあるいはEntecavir単剤で維持療法を行っているが、現在再発例は認めない。12例にHBVワクチンを施行し、5例にHBs抗体の産生を認めた。【まとめ】B型肝肝硬変に対する生体肝移植後は核酸アナログ + HBIGによる強力なB型肝炎再発予防が適切と考える。B型劇症肝炎症例あるいはHBc抗体陽性グラフト移植症例に対しては、Entecavirを中心とした核酸アナログ単剤での維持および積極的なHBVワクチンの施行が今後のオプションとしてあげられる。
索引用語 肝移植, B型肝炎