| セッション情報 |
研修医発表
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| タイトル |
線維化の進行したC型肝炎として当初治療したが二次性門脈圧亢進症が関与した肝硬変の一例
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| 演者 |
中村 吏(九州大学 医学研究院 病態修復内科学) |
| 共同演者 |
酒井 健司(九州大学 医学研究院 病態修復内科学), 相島 慎一(九州大学 医学研究院 形態機能病理学), 下田 慎治(九州大学 医学研究院 病態修復内科学) |
| 抄録 |
症例は51歳女性。HCV抗体陽性の肝硬変で食道静脈瘤に対して硬化療法施行後、血小板減少に対して脾臓摘出術(脾摘)後にIFNによる治療目的で紹介となった。肝硬変の程度はChild BでHCVウイルス量はハイレンジ法で5kU/ml未満、グルーピングは不明であった。肝庇護剤は投与されていたがAST/ALT=65/38でありごく少量存在するHCVに対してIFNを施行しSVRとして肝機能のコントロール、肝硬変の増悪回避を図ることとした。後にHCV RNAが定性で陰性であることが判明し、肝障害の原因としてHCVによる関与以外に抗核抗体(1+)陽性、IgGが2261mg/dlあったことより自己免疫性肝炎(AIH)の可能性も考えられ、鑑別のため肝生検を勧めたが同意を得られなかった。抗核抗体弱陽性は健常者の1割弱でみられることとIgGの上昇は肝硬変に伴う変化でも矛盾しないこと、さらにはAIHの治療としてステロイドを使用した場合糖尿病が出現するリスクを考え、まずはIFNアルフア製剤(スミフエロン)を少量投与行い慎重に経過を観察したがAST/ALTの改善を認めなかったため、ここで初めて同意が得られた肝生検を施行した。門脈域の門脈は全周性に肥厚した線維で置換され門脈圧亢進症を疑う病理所見であった。脾摘後に門脈血栓症の既往があることから二次性の門脈圧亢進症と診断し、二次的に出現する血栓予防のためワーフアリンを継続するとともに降圧剤(ベータ遮断薬・プロプラノロール)を開始してAST/ALTの安定化を得た。考察するに本症例は肝硬変になるまでの経過と脾摘後の経過では病因病態が異なっていたと考えられ、示唆に富む症例であったため若干の文献的考察を加え報告する。 |
| 索引用語 |
門脈圧亢進症, HCV |