セッション情報 研修医発表

タイトル

乳癌に対する内分泌療法剤使用後に発生した肝細胞癌の2例

演者 下野 洋和(鹿児島共済会南風病院肝臓内科)
共同演者 柴藤 俊彦(鹿児島共済会南風病院肝臓内科), 迫 勝巳(鹿児島共済会南風病院肝臓内科), 小森園 康二(鹿児島共済会南風病院肝臓内科), 川井田 浩一(鹿児島共済会南風病院外科), 末永 豊邦(鹿児島共済会南風病院外科), 田中 貞夫(鹿児島共済会南風病院病理)
抄録 【はじめに】最近非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から発生した肝細胞癌の報告が増加している。今回乳癌に対する抗エストロゲン剤使用後にNASHへの進展、肝発癌をきたしたと考えられた2症例を経験したので報告する。【症例1】75歳女性。既往症に高血圧、狭心症、高脂血症。飲酒歴はなし。H10年5月、乳癌(Stage2)に対し乳房切除術施行。術後5年間Tamoxifenを内服されていた。H20年1月、肝右葉に径4cm大の腫瘍を指摘され、当科入院。HBs-Ag(-) HCV-Ab(-) AST 36IU/l ALT37IU/l AFP 1.4ng/ml PIVKA2 25mAU/ml。精査より肝細胞癌(Stage2)と診断、肝部分切除術が施行された。病理診断にて結節部は中~低分化肝細胞癌で、非結節部はNASHの診断であり、Bruntの組織分類ではGrading 2、Staging4 であった。【症例2】81歳女性。既往症に高血圧、高脂血症、糖尿病、甲状腺機能低下症。飲酒歴はなし。H16年12月左乳癌(stage1)に対し乳房切除術施行。術後4年間Tolemifenを内服されていた。平成21年1月、肝右葉S7-8に径2cm大の腫瘤が認められ、当科入院。HBs-Ag(-) HCV-Ab(-) AST 27IU/l ALT15IU/l AFP 3.7ng/ml PIVKA2 22mAU/ml。精査より肝細胞癌(Stage1)と診断、病理診断は高分化肝細胞癌の診断であり、経皮的エタノール注入療法が施行された。【まとめ】乳癌術後の内分泌療法においてTamoxifen, TolemifenいずれもNASH誘発の報告が認められる。症例1は抗エストロゲン剤使用中、肝予備能の低下あり、NASHへの進展、肝発癌への関与が疑われた。症例2は組織学的にNASHの診断は得ていないが、高度脂肪肝の存在を認め、症例1と同様の機序による肝発癌の関与が疑われた。抗エストロゲン剤の使用に当たっては薬剤性NASHの可能性、肝発癌の可能性を考え、厳重な経過観察が必要と考えられた。
索引用語 NASH, 抗エストロゲン剤